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749. Pick Upで取り上げた気候変動に関する報告書

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749. Pick Upで取り上げた気候変動に関する報告書


令和5年度が始まりました。国際農研Pick Upでは、国際機関等で発行された報告書を取り上げて紹介しています。令和4年度は23件の報告書を紹介しました。令和5年度も多くの報告書を取り上げる予定ですが、今日のPick Upでは昨年の紹介した報告書の中から気候変動に関する4つをまとめてみました。

 

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価統合報告書(AR6 Synthesis Report)によれば、1850-1900年比で2011-2020年の気温は1.1℃上昇しており、人類の活動は、温室効果ガスの排出を通じて地球温暖化を引き起こしていることは疑いの余地がありません。2021年10月までに各国が表明した「国が決定する貢献(NDCs)」によるコミットメントと温室効果ガス排出の予測の間には大きなギャップがあり、21世紀中に1.5℃上昇する可能性は高く、2℃未満に抑制するのも困難な状況に陥りかねません。

国連環境計画(UNEP)による報告書(Emissions Gap Report 2022)によると、このままの温室効果ガス削減対策では、パリ協定で定められた気温上昇を1.5℃未満とする目標達成からほど遠いことを指摘、気温上昇が今世紀までに2.8℃に達しかねないと警鐘をならしています。

2022年を見てみると世界の二酸化炭素排出量は、前年比で0.9%増加し、過去最高を記録したことが明らかになりました。ただし、エネルギー危機による化石燃料使用の増加による影響は、太陽光や風力発電などのクリーンエネルギーの成長や、エネルギー効率の改善等によって相殺されることで、当初に予想されたよりも低い増加率となったと国際エネルギー機関(IEA)は「CO2 Emissions in 2022」で報告書しており、クリーンエネルギーへの移行の加速を呼びかけています。

世界的には気候変動への適応に進展がみられてはいるものの、気候変動の進行とともに適応のギャップは拡大し、適応不全が起きているセクターや地域もあり、とくに金融支援が不十分な開発途上国は課題に直面しています。農業分野からの二酸化炭素排出量は、世界の排出量の20%以上を占めています。国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国連気候変動ハイレベルチャンピオンによる報告書「Breakthrough Agenda Report 2022」では、農業分野における国際協力の重要な優先事項の1つとして、途上国の小規模農家が農業生産性と耐久性を向上させつつ温室効果ガスの排出を削減するための資金へのアクセスを改善することを述べています。従来の農業から、温室効果ガス排出削減でき持続可能な農業への移行を加速するには、長期的なプロセスが必要であり、持続可能な慣行に関する知識の共有の必要性を述べています。さらに、国々は国際貿易が持続可能な農業を促進する方法について議論を開始すべきとしています。

 

各報告書の内容についてはそれぞれのPick Upで紹介していますので、下のリンクからご覧ください。また、今年度も国際機関発信の情報を含み、食料システム、気候変動や、食料栄養安全保障にかかわる話題をとりあげていきます。

 

国際機関等による報告書および紹介Pick Up

AR6 Synthesis Report (IPCC)
742. IPCC第6次評価統合報告書 ~気候変動という時限爆弾に対する人類のサバイバルガイド~

CO2 Emissions in 2022 (IEA)
729. 2022年世界における温室効果ガス排出

Emissions Gap Report 2022 (UNEP)
656. 国連環境計画「排出ギャップ2022 閉まり続ける扉(The Closing Window)」報告書

Breakthrough Agenda Report 2022 (IEA, IRENA)
629. 国際的な協力のギャップがネットゼロを数十年遅らせる可能性

 

(文責:情報広報室 金森紀仁)


 

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