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629. 国際的な協力のギャップがネットゼロを数十年遅らせる可能性

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629. 国際的な協力のギャップがネットゼロを数十年遅らせる可能性

国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国連気候変動ハイレベルチャンピオンは、世界の温室効果ガス排出量の削減をより迅速に進めるため、国際協力強化の支援に焦点をあてたブレークスルー・アジェンダ報告書を公表しました。

これは、令和3年11月に開催された気候変動枠組み条約COP26で、英国が「2030年までに電力、道路輸送、鉄鋼、水素、農業の5 つの重点分野において、クリーン技術と持続可能な慣行を代替品よりも手頃で、アクセスしやすく、魅力的なものにする」という目標の下で主導して立ち上げた、グラスゴー・ブレークスルー(我が国を含め、45か国・地域が参加)に関する初めての報告書で、各国の行動を一致させ、展開を拡大しコストを下げるための投資を調整することを目的としており、もしも国際的な協力がなければ、ネットゼロ(世界の温室効果ガスの排出量が正味ゼロ)への移行は数十年遅れる可能性があるとしています。

今回の報告書の中で、農業分野について以下のように報告されています。

GHG排出量を削減しつつ農業の生産性と強靭性を高めるために、開発途上国の零細農家に対する資金アクセスを改善することが、国際協力の当面の優先事項です。現在の農法は天然資源を枯渇させるだけでなく、世界の排出量の5分の1以上を占めています。強靭で持続可能な農業のための技術や実践の研究、開発、実証へのグローバルな投資を増加させる必要があります。慣行農業からの脱却を加速させるためには、農業政策を持続可能な方向へ転換する知見を共有するための長期的なプロセスの確立が必要です。また、各国は、国際貿易が持続可能な農業への移行を促進する方法について、重点的に議論を始めるべきです。

また、今後1~2年の間に国際協力を強化するための優先事項として、以下のアクションを推奨しています。

1. 政府と企業は、農業の研究・開発・実証(RD&D)に対するより高いレベルの投資を実現するために協力し、国際的な RD&D の共同イニシアティブやプログラムの規模や多様性を拡大する必要がります(食料廃棄物の削減、家畜や肥料からの排出の制限、代替タンパク質の改善、気候変動に強い作物や家畜の開発、土壌や水資源の保護につながるイノベーションを優先)。

2. 世界的なGHG排出、適応と回復力、食料安全保障に対する農業の重要性に応じて、農業に向けられる国際的な資金のレベルを大幅に引き上げるべきであり、政府、開発銀行、民間投資家は、途上国の中小企業や零細農家がこれまでよりはるかに大規模な資金を利用できるよう協力すべきです。

3. 政府、研究機関、国際機関、民間企業は、農業政策と支援を持続可能性と気候変動への対応に方向転換するためのアプローチについて、検証、エビデンスの構築、知見の共有を行うための長期的プロセスへのコミットが必要です。

4. 各国政府は、国際貿易が持続可能な農業への移行を促進し、妨げないようにする方法について、戦略的対話を開始すべきです。

5. 国や国際機関は、土壌の炭素量や土壌の健康状態など、農業が依存する天然資源の状態や、農業の地理的範囲に関するモニタリングと報告について、国際的に合意された基準を開発する必要があります。

 

(参考)
Breakthrough Agenda Report 2022
-Accelerating Sector Transitions through Stronger International Collaboration-
https://www.iea.org/reports/breakthrough-agenda-report-2022

 

(文責: 情報広報室 金森紀仁)

 

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