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684. 世界の食・農業に関する数字

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684. 世界の食・農業に関する数字

今日、食料システムのグローバル展開により、世界の GDP4%に過ぎない農業が、世界人口の半数以上を占める都市人口を含む人類を養っています。一方で、今日の食料システムは、飽食による人類への健康リスクを増大させる一方、栄養失調の完全な撲滅には失敗しています。不健康な食生活の影響は、次第に地球規模で累積し、肥料・農薬使用による環境汚染や生物多様性の喪失、土地利用変化、および温室効果ガス排出の元凶となり、地球システムの維持安定を脅かすようになっています。2020年代のいま、食料システムは、環境面からも持続的で万人に公正なあり方で健康に資する食を提供するという点からは大きく逸脱していると認識されており、イノベーションによる解決を模索することが世界的潮流になっています。

しかし、農業は各地域の気候・日照時間に規定されたローカルなコンテクストで営まれ、さらに土壌や地形に応じた技術の取り入れやすさによって、農業の在り方は極めて多様です。よって多様な農業課題に対する万能な技術・解決策はなく、現地の農業気候土壌学的・社会経済的条件に合わせた技術開発が求められています。世界の食料安全保障を維持しつつ、食料システムの転換を図るための戦略策定には、世界の農業の多様な現状に関する情報を常にアップデートしていくことが必要となります。

 

本日は、国連食糧農業機関(FAO)が最近公表した2022年の世界食糧農業統計報告書紹介ページから、世界の食・農業に関する数字を取り上げてみたいと思います。 

摂取カロリー:世界で消費されるカロリーの一日当たりの平均値は、2,960キロカロリーでした。2000年以来世界の全ての地域でカロリー消費量が増えており、とりわけ2021年にアジア諸国での大幅な増加が報告されました。ヨーロッパと北米での平均カロリー消費量が最大で一日当たり3,540キロカロリー、アフリカ諸国が最も低く平均キロ2,600キロカロリーでした。

気温上昇と温室効果ガス排出:1951-1980年に比べ、2021年の世界の平均気温は1.4℃上回っており、ヨーロッパが最高上昇値を記録、アジアが続きました。農地からの温室効果ガスは2000年から2020年の間に4%削減しています。牛は鶏にくらべ50倍の二酸化炭素を排出し、コメは小麦や粗粒穀物にくらべ5倍の温室効果ガスを排出します。

生産:2000年以来、サトウキビ、トウモロコシ、小麦、コメといった作物の生産は52%増えました。植物油は同時期に125%生産が増え、とくにパーム油は236%増加しました。肉生産は、鶏肉生産の伸びに牽引されて45%増加した一方、果物や野菜は20%弱の伸びでした。

貿易:世界食料輸出は価値ベースで1.42兆ドルと、21世紀に入って以来3.7倍増えています。総額ベースで世界の最大食料出国はアメリカ、オランダ、中国ですが、最大の純輸出国はブラジルで、アルゼンチン、スペインが続きます。対照的に、世界の純輸入国は、中国、日本、イギリスです。

土地利用:地球の表面の47.4億ヘクタールが作物および放牧地を含む農業用地となっていますが、2000年以来、全体的に農業用地は3%減少し、一人当たりではもっと早く減少しています。

農薬利用:世界的に見て、農薬利用は2012年にピークを迎え、2017年から減少傾向にあります。ヘクタール当たり最大の農薬使用国はセントルシア、モルディブ、オマーン、と報告されています。

 

報告書原本は、様々な農業統計について、世界地図等を使い、平均値では捉えきれない世界の農業・食の多様性を示してくれています。ぜひ、ご覧になってみてください。
  

また、このような世界食料システムの成り立ちについては、 今年3月に行われた農学会公開シンポジウム「持続可能な食料システムに向けて」 におけるプレゼン資料も参考にしてみてください。

 

(参考文献)
FAO. 2022. World Food and Agriculture − Statistical Pocketbook 2022. Rome.
https://doi.org/10.4060/cc2212en

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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