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319. 世界の雨期・雨季と農業について
今年の関東甲信地方の梅雨入りは一週間前の6月14日、平年より1週間遅く、ここ10年で一番遅い梅雨入りだそうです。 他方、日本の中でも沖縄は例年より5日早い梅雨入りでした。
イギリス気象庁によると、英語でいうRainy Season(Wet Season)は、ある国・地域において、年間の雨量の大部分が降る期間とされています。世界の多くの国で、季節は気温で定義されており、日本の梅雨は雨期(雨の多い時期)、と表現されます。他方、赤道に近い熱帯諸国では、年間を通じて気温の変化が少ない一方、季節は雨量に応じて定義され、雨季・乾季として定義されます。 世界で雨期・雨季の在り方は様々であり、モンスーン、サバンナ、熱帯地域、等、地域によって大きく異なります。
モンスーンはもともと季節風の一種を意味します。とくにモンスーンの影響を受けて比較的雨が多く湿潤な、アジアの東から南にかけての地域を「モンスーン・アジア」とされ、日本もその一部とされています。モンスーンは乾季・雨季(乾期・雨期)のある気候を形成しますが、全体としては湿潤な気候をもたらすため、熱帯モンスーン気候、温帯夏雨気候、温暖湿潤気候となり、稲作の好適地となります。
これに対し、アフリカ諸国にも広く観察されるサバンナ型の雨季を持つ地域では、一年中暑く、まったく降雨のない乾季が数か月続き、短い雨季(地域によって年に複数回あることも)の間にまとまった大雨が降ります。雨季は夕立のような激しい雨が夜半に降るため、日中に傘は必要ないことがほとんどで、日本の梅雨とはずいぶん異なります。
雨のパターンは世界各地の農業の在り方に大きな影響を及ぼします。国際農業研究ネットワークであるCGIARの International Water Management Institute (IWMI)によると、開発途上国の農民の多くは天水農業に依存し、サブサハラアフリカの95%、ラテンアメリカの90%、中東北アフリカ地域の75%、東アジアの65%、南アジアの60%の農地が相当すると推定されています。天水農業に依存する農民は、様々な不確実性やリスクに直面しています。たとえばサバンナ型降雨パターンの天水農業に依存する農民は、雨季遅れによる干ばつ、逆に雨季中の激しい集中的な降雨がもたらす土壌浸食、など、水の不足・強度がもたらす複数の問題に対応しなければなりません。
国際農研はアジア・アフリカ・ラテンアメリカなどの開発途上国で研究活動を行っていますが、各国・地域の雨季・雨期パターンが規定する農林水産業の課題・ニーズを把握することが、技術開発の第一歩となります。気候変動は、雨季・雨期のパターンを変更させ、異常事象をもたらすことが懸念されています。国際農研は、開発途上国各地域における雨季・乾季パターンの変化も想定し、適切な水管理や育種・栽培技術などを動員し、気候変動に強靭な農業システムの構築に貢献するべく、技術開発に取り組んでいます。
(文責:環境プログラム 林慶一、食料プログラム 中島一雄、情報プログラム 飯山みゆき)