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675. 孤児作物の遺伝資源多様性研究の重要性

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675. 孤児作物の遺伝資源多様性研究の重要性

世界では20億人以上が、「隠れた飢餓」と呼ばれる深刻な微量栄養素の不足に苦しんでいます。このような状況で、コメ、コムギ、トウモロコシ、ダイズなどに代表される作物種への過度な依存は、農業作物の遺伝的多様性の喪失をもたらし、世界の食料安全保障にとって潜在的な脅威になります。さらに、作物育種の脆弱性、偏った栄養バランスにつながる可能性も指摘されています。

近年、生物資源とバイオテクノロジーを活用して、地球規模の課題解決と経済発展の共存を目指す「バイオエコノミー」の早期実現が提唱されており、その中で、孤児作物(注)と呼ばれる十分に活用されていない作物や遺伝資源を効果的に利用することが注目されています。

(注)特定の地域で生産・消費され、国際的に取引されていない果物、野菜、マメ科植物、穀物が含まれます。アマランサス、バオバブ、モリンガ、キヌア、シコクビエ等があります。孤児作物は十分に活用されていない食用植物であり、先進国における農業では、現在は注目されていません。

孤児作物の一つである、ヒユ科アマランサス属アマランサス種(Amaranthus spp.)は、60~70種で構成され、南・東南アジア、南米、アフリカにおいて、葉物野菜、食用穀物、飼料作物、観賞用植物として栽培されています。これら地域で生活する人々にとって、アマランサス種は重要な食用作物であり、病害、高温、干ばつ、塩害などの環境ストレスに強く、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を大量に含んでいます。その栄養価の高さから、アマランサス種は代表的な植物性スーパーフードの一つとして世界保健機関(WHO)から認定されています。しかし、アマランサス種は、その多様性と優れた栄養価にもかかわらず、先進国における需要の低さから、育種研究は遅れていました。
国際農研は、筑波大学、世界蔬菜センター、かずさDNA研究所と共同で、アジア地域の伝統的な野菜「ヒユナ」(Amaranthus tricolor L.)の遺伝的多様性を世界で初めて解明しました。

 

来週12月12日に開催されるセミナーでは、「ヒユナ」研究についての発表も行われる予定です。ぜひお申込みください。登録締め切りは本日12月9日16時となります。

 

セミナー
栄養改善と生活向上に資するローカル・ランドスケープ由来の食利用を促進するための科学と伝統知の適用
主催    国際農林水産業研究センター(国際農研;JIRCAS)
   The Alliance of Bioversity International and CIAT
開催日    2022年12月12日(月)14:00~16:00
場所    ハイブリッド(場所:ビジョンセンター日比谷、会場人数は登録先着順40名までを予定)
特設サイト https://www.jircas.go.jp/ja/event/2022/e20221212
登録サイト https://www.jircas.go.jp/ja/event/2022/e20221212/entry
備考1 会議進行は英語になります(同時通訳はありません)
備考2 登録の際、会場参加かオンライン参加かをお知らせください。

(文責:生物資源・利用領域 星川 健、食料プログラム 中島一雄、情報プログラム 
飯山みゆき)
 

 

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