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646. 気候変動下でのアフリカの食料自給
646. 気候変動下でのアフリカの食料自給
TICAD 8から日が立ちますが、今日は久しぶりにアフリカの話題です。
Earth’s Future誌にて公表された論文は、気候変動と人口増の双方によって食料安全保障の懸念が高まることに警鐘を鳴らしました。
著者らは、農業水文学・気候・社会経済モデルを用い、ベースラインおよび3℃の温暖化シナリオのもとで、灌漑面積拡大による食料生産の推計と食料安全保障状況を比較分析しました。分析によると、3℃の温暖化のもとで、農業用水確保の手段がなければ、大陸の人口が35億人に達する予測の中、13.5憶人分の食料しか生産できず、21.5憶人の人々の食料が不足する可能性を示唆しました。農業生産性の向上が不可能な場合、耕地のさらなる拡大か輸入への依存を高めるしかなく、アフリカの人々は世界の食料価格の動向にさらに脆弱な状況に置かれると指摘しています。
論文は、アフリカにおいて食生活を見直し、乾季中の灌漑用水の確保や、フードロスの廃棄によって食料不足の一部が緩和できるとしています。
アフリカ農業の生産性を向上するには、環境・社会経済条件の多様性に向かい、ローカルレベルでの水・灌漑のほか、農業気候土壌学的条件に配慮し、農家の視点に沿った科学技術イノベーションを講じていく必要があります。国際農研では、アフリカの稲作システム・畑作システムを対象に、農業生産性向上のための技術開発を行っています。
アフリカ研究特設ページ
https://www.jircas.go.jp/ja/africa-research
604. TICAD 8 サイドイベント「健全な土壌とアフリカの食料安全保障」開催報告
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220825
619. TICAD 8 サイドイベント「アフリカ農学と土壌肥沃度・貧栄養土壌管理の課題」開催報告
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20220915
(参考文献)
Areidy Beltran‐Peña et al, Future Food Security in Africa Under Climate Change, Earth's Future (2022). DOI: 10.1029/2022EF002651
(文責:食料プログラム 中島一雄、生産環境・畜産領域 辻本泰弘、中村智史、情報広報室 金森紀仁、情報プログラム 飯山みゆき)