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949. アフリカのコメ自給率

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949. アフリカのコメ自給率

 

今日は、国際農研とも縁の深い齋藤和樹博士が執筆にかかわったNature Communications誌の論文「アフリカ稲作の収量向上により、輸入依存から脱却し、農地拡大による自然破壊を回避せよ」を紹介します。

アフリカでは歴史的に、トウモロコシ・ソルガム・キャッサバといった作物を主食としてきましたが、経済成長や消費者嗜好の変化により、コメ消費量が増えてきています。人口増もあいまって、過去30年間にアフリカにおけるコメ消費は大幅に拡大してきました。

アフリカはコメの約60%を自給していますが、消費に足りない分を輸入に依存しています。過去10年にわたり、稲作面積は40%近く拡大しましたが、平均的に収量は停滞したままでした。輸入依存は食料安全保障のリスクを伴うことから、アフリカ諸国にとって自給率を向上することが悲願です。

本研究は、作物シミュレーションモデルと生産各地の気象・土壌・生産管理データセットを統合し、アフリカにおいて2050年までに異なる集約化シナリオのもと、既存農地における生産増のポテンシャル・農地拡大・輸入量について推計しました。

分析の結果、現状の耕地拡大の継続とともに達成可能収量と収量の差を半分以上解消することで、アフリカはさらなる輸入依存度を回避し、解消することが可能とわかりました。一方、大幅な収量の向上なしに、将来のコメ需要を満たすにはコメ輸入の増加および現状以上の農地拡大による自然破壊を伴いかねません。

アフリカにおける稲作適地、とりわけ灌漑稲作適地を見極め、収量向上のイノベーションを講じていくことは、世界の食料安全保障と自然保全への貢献からも重要です。

 

(参考文献)
Yuan, S., Saito, K., van Oort, P.A.J. et al. Intensifying rice production to reduce imports and land conversion in Africa. Nat Commun 15, 835 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-44950-8


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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