Pick Up

574. 報告書「2022 年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」:健康な食生活を享受するための食料・農業政策の見直しを

関連プログラム
情報

 

574. 報告書「2022 年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」:健康な食生活を手ごろに入手可能にするための食料・農業政策の見直しを

パンデミックの影響が未だに長引く中、昨年来の燃料価格・肥料価格の上昇に加え、今年2月下旬に始まったロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、食料価格が高騰しています。 国際社会において、世界的な食料安全保障の危機への懸念が高まっています。

飢餓人口をはじめ、世界の食料栄養安全保障について公式な推計値を提供するのが、5つの国連機関(FAO, IFAD, UNICEF, WFP, WHO)によって公表される「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World Report: SOFI)」報告書です。7月6日、ニューヨークのハイレベル政治フォーラム(HLPF)にて、SOFI 2022年版が発行されました。 今年の副題は「健康な食生活を享受するための食料・農業政策の見直しを: Repurposing food and agricultural policies to make healthy diets more affordable」です。

以下、ロシアによるウクライナ侵略前の数値ですが、2022年の飢餓人口推計値は、新型コロナの影響による流通の滞りや経済停滞の影響が反映する数値となっています。

2021年にはCOVID-19から世界が回復し食料安全保障の改善が期待されていたのに反し、各国間・国内の格差悪化を反映し、世界の飢餓はさらに上昇しました。2015年からほぼ一定水準であった栄養不足蔓延率(PoU)は、2019‐2020年の間に8.0%から9.3%に悪化、そして減速はしたものの、2021年に9.8%まで上昇しました。

2021年、7.02億人 – 8.28億人が飢餓の影響下にあると推計されました。この数は、COVID-19パンデミックの発生により1.5億人増加しましたが、その内訳は2019-2020年に1.03億人、2021年に4600万人でした。予測では、飢餓ゼロを目指す2030年でも世界人口の8%に相当する6.7億人が飢餓に直面するとされ、持続可能な開発目標を開始した2015年と人口比で同じ水準にとどまることになります。

飢餓に直面する人々のうち、4.24億人がアジア(地域人口比で9.1%)、2.78億人がアフリカ(地域人口比で20.2%)、5650万人がラテンアメリカ・カリブ地域(地域人口比で8.6%)でした。

一方、COVID-19パンデミック及びその抑止策に起因する経済インパクトを反映したインフレにより、2020年、31億人の人々が健康な食生活を享受できなかったとされ、この数は2019年よりも1.12億人増加しました。

 

こちらのインターアクティブサイトで、重要な統計値が示されています。

https://www.fao.org/interactive/state-of-food-security-nutrition/en/

 

 

報告書は、2030年まであと8年しか残されていないにもかかわらず、様々な困難と不確実性に見舞われる中、進歩は不十分であり、飢餓撲滅というSDG2ターゲット達成の道筋からはますます乖離しつつあることに懸念を表明しています。最近の食料安全保障の危機や栄養不良悪化の背後にある要因(紛争、気候変動・異常気象、経済ショックを含む)に加え、栄養に富む食のコスト高騰と格差拡大が食料安全保障と栄養への課題として立ちはだかっています。報告書は、アグリフードシステムを転換し、より強靭で、全ての人々にとり栄養ある食を手ごろな価格で持続的かつ包括的に提供するために、農業・食料政策を見直す必要性を訴えました。

 


FAO駐日連絡事務所は、他国連4機関と共同で、日本国内向けのイベント(日英同時通訳つき)を7月15日に開催する予定です。詳細につきましては、以下のサイト等でご確認ください。
https://www.fao.org/japan/announcements/2022/jp/

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

関連するページ