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336. 報告書「2021年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」:飢餓人口は昨年より1億1800万人増加

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7月12日、「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World Report: SOFI)」の2021年版が発行されました。 SOFIはもともと国際連合食糧農業機関(FAO)の旗艦報告書の1つであり、5つの国連機関(FAO, IFAD, UNICEF, WFP, WHO)が共同で制作する形をとっています。今年の副題は「すべての人の食料安全保障、栄養改善、健康的で入手可能な食事のためのフードシステム変革(Transforming food systems for food security, improved nutrition and affordable healthy diets for all)」です。

目を引くのは、やはり新型コロナウイルスパンデミックの影響です。世界の飢餓人口は2014年から穏やかな増加傾向が続いていましたが、2020年は2019年と比べて1億1800万人(範囲の中間をとった場合。最大1億6100万人)急激に増加し、7億2000万人~8億1100万人と推計されました。2030年にはまだ6億6000万人が飢餓に直面している可能性があり、新型コロナが発生しなかった場合と比べて3000万人多い数字です。

重度の食料不安を抱えている人は9億2800万人(12%)で、昨年より1億4800万人増えました。食料不安にはジェンダーギャップも存在し、その差はコロナ禍でさらに広がりました。また、23億7000万人(3人に1人)は適切な食事(必要な栄養素を満たす食事)にアクセスできておらず、これはたった1年で3億2000万人の増加となっています。さらに、健康的な食事(必要な栄養素を適切に摂取でき、多様な食品を含む食事)はコストが高いため特に貧しい人々にとっては手が届かないものであり、30億人が健康的な食事をする余裕がないとされます。

5歳未満児に関しては、コロナの状況がデータに反映されていないケースもあり実際にはもっと多いかもしれませんが、22%(1億4920万人)が発育阻害、6.7%(4540万人)が消耗、5.7%(3890万人)が過体重です。子どもの栄養不良は特にアフリカとアジアで多くみられます。

食料不安や栄養不良の主な要因は、紛争、気候変動、経済危機(コロナで更に悪化)などです。これらは今後も続くと考えられ、2030年までに栄養に関する指標の目標は世界的にみて何一つ達成できそうにありません。本報告書では、フードシステム変革に向けての6つの経路(紛争、気候、経済、サプライチェーン、貧困、食事パターン)を特定し、飢餓の増加やあらゆる形の栄養不良の背後にある要因に対処するための提言を行っています。

こうした最新の国際情勢を知る機会は非常に重要です。その一環として、本日7月14日(水)日本時間15:00 – 16:30、国際連合食糧農業機関(FAO)の駐日連絡事務所主催、国際農研協力により、ウェビナー「OECD-FAO 農業アウトルック報告書 出版記念イベント」を開催します。

■日時:2021年7月14日(水)15:00~16:30
■開催:オンライン(Zoom)
■プログラム:https://www.jircas.go.jp/ja/event/2021/e20210714

イベントの様子や議論の内容につきましては、後日、HP等にて報告させていただきます。

(登録は7月12日(月)で締め切りました。ご登録ありがとうございました。問い合わせにつきましては、以下にお願いいたします。)
国際農研 情報広報室 URL: https://www.jircas.go.jp/ja/form/inquiry

 

参考文献
FAO, IFAD, UNICEF, WFP and WHO. 2021. The State of Food Security and Nutrition in the World 2021. Transforming food systems for food security, improved nutrition and affordable healthy diets for all. Rome, FAO. https://doi.org/10.4060/cb4474en  Accessed on July 13

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)

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