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820. 報告書「2023年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」:飢餓人口は依然としてコロナ前をはるかに上回っている

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820. 報告書「2023年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」:飢餓人口は依然としてコロナ前よりはるかに上回っている

 

7月12日、国連機関(FAO, IFAD, UNICEF, WFP, WHO)による「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World Report: SOFI)」の2023年版が公表されました。今年の副題は「都市化、農業・食料システム変革、農村・都市連続体における健康的な食生活(Urbanization, agrifood systems transformation and healthy diets across the rural–urban continuum)」です。

本報告書によると、2022 年の世界の飢餓人口は6 億 9,100 万~7 億 8,300 万人と推定されます。飢餓人口は依然として新型コロナウイルス感染症パンデミック前の水準をはるかに上回っており、2019年と比べて1億2,200万人(2022年の飢餓人口を中間の7億3500万人とした場合)増加、人口割合では7.9%から9.2%へと増加しています。 この状況ではSDGの目標2(飢餓をゼロに) の達成は難しく、達成期限の2030 年においても6 億人近くが慢性的な栄養不足(飢餓)に陥っているだろうと推測されています。

2022年には世界人口の29.6%(24億人)が中度・重度の食料不安にあり、この数字は2020年から高止まりしています。食料不安は女性や農村部の人々に多く見られます。また、2021年には31億人以上(42%)の人々が健康的な食事を手に入れることができていまません。2019年から2021年の間に健康的な食事のコストは世界的に6.7%増加しており、支出に占める食費の割合の多い低所得世帯ほど影響を受けます。 さらに、2022年には5歳未満の子どものうち、1億4,810万人(22.3%)が発育阻害、4,500万人(6.8%)が消耗症、3,700万人(5.6%)が体重過多と推定されています。全体として、完全母乳育児など順調な進捗がみられる項目もあるものの、すべての栄養目標を達成するための軌道からは外れていることを示しています。

飢餓と栄養不良の世界的な傾向が、紛争、極端な気候、経済的ショック、栄養価の高い食料の入手困難さ、不平等の拡大の相互作用によって引き起こされていることはこれまでの報告書でも繰り返し述べられてきました。加えて本年の報告書では、他の重要なメガトレンドの1 つである都市化にも焦点をあてています。

食料購入額が都市部の世帯だけでなく農村部の世帯の間でも高額になっていることや、都市近郊や農村部でも高度に加工された食品の消費が増加していることがわかってきました。 農業・食料システムは農村と都市を単純に切り離して語れないものになっています。私たちは、食料安全保障と栄養を改善するための政策と行動をより適切に形作るために、農村と都市の連続性を理解する必要があります。

2050年には10人のうち約7人が都市に住んでいるだろうと言われます。都市化は食料システムをさまざまな形で変化させ、すべての人に健康的な食事を確保する機会と課題の両方を生み出しています。 農業・食料システムの変化は都市と農村の連続性を通してみる必要があります。


(参考文献)
FAO, IFAD, UNICEF, WFP and WHO. 2023. The State of Food Security and Nutrition in the World 2023. Urbanization, agrifood systems transformation and healthy diets across the rural–urban continuum. Rome, FAO. https://doi.org/10.4060/cc3017en

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)

 

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