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347. 2021年アース・オーバーシュート・デイ

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347. 2021年アース・オーバーシュート・デイ

アース・オーバーシュート・デイ(Earth Overshoot Day)とは、特定の年において人類の生態系資源やサービスに対する需要が地球による再生供給能力を超えてしまう日として定義されます。 アース・オーバーシュート・デイは、非営利の国際シンクタンクであるグローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network)によって企画・報告されています。

1970年初頭以来、生態系への需要が供給を上回り続ける状況が続いています。毎年アース・オーバーシュート・デイを決定するにあたり、地球が毎年生み出すことのできる生態系資源である環境収容力(biocapacity)が人間の生態系に対する需要を満たす日数を計算し、残りの日は需要が供給を上回る<オバーシュート>としてみなされます。

2020年、COVID-19パンデミック封じ込めのためのロックダウン等の政策により、一時的に二酸化炭素排出が落ち込み、年末までに2019年の排出と比べて5.8%低い水準であったと報告されました。一方、最近の推計データによると、2021年のカーボン・フットプリントは6.6%上昇すると見込まれています。もう一方の変化として、2020年、ブラジルだけでも110万ヘクタールとされる森林破壊・劣化により、世界の森林の環境収容力が0.5%低下したと推計しました。グローバル・フットプリント・ネットワークは、2021年1月1日からの温室効果ガス排出と森林の環境収容力の変化を評価した結果、2020年よりも世界的な環境フットプリントが4.6%上昇すると結論づけました。

これを受け、2021年のアース・オーバーシュート・デイは、昨年2020年の8月22日よりも3か月早まり、7月29日と、2019年の水準に逆戻りしました。また、2020年時点では、人類は地球1.6個分の資源を搾取しているとされたところ、2021年は地球1.7個分相当の消費を行っていると推計されています。

NASAも関わった最近の研究では、森林破壊や劣化の影響を受け、「地球の肺」とも称される熱帯林の温室効果ガス吸収能力が弱まってきているとの報告がありました。 森林破壊の最大の原因は農業による土地利用の変化とされています。現在の農業の在り方は地球の生態学的な環境収容力の限界を超えてしまっていますが、その原因の一つとして食に伴う環境・健康被害等の社会的なコストが「外部化」されていることが指摘されています。 言い換えれば、アース・オーバーシュートをもたらしている現在の飽食の背後には、我々が支払う食の価格に健康や環境に関するコストが反映されていないことを意味しています。逆に、世界の多くの人々にとり、健康な食は高価すぎて手が届かないものとなっています。

2021年は国連食料システムサミットをはじめ、持続的なフードシステムの在り方を議論する様々な国際イベントが企画されていますが、地球環境や気候変動及び健康の関連から我々の享受している食の在り方を見直す契機といえます。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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