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323. 食の真のコスト と真の価格

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323. 食の真のコストと真の価格

先日もお伝えしたように、 今年9月に開催される国連食料システムサミット(UNFSS)に向けて、科学者グループ(scientific group)が設置され、持続的で包括的で強靭なフードシステム構築という目的を達成するための科学・技術・イノベーションの役割について議論を行っています。

今月はじめ、科学者グループは、「食の真のコストと真の価格 The True Cost and Price of Food」という報告書を公表しました。  報告書は今日のフードシステムの抱える本質的な問題の一つとして、健康・環境に良くない食料の費用がしばし「外部化」 されている ―市場価格に反映されていない― という問いをたて、その費用の推計を試みました。外部性とは経済用語で、例えば公害などを生む経済活動の費用が十分に市場価格に反映されずに安い場合、社会に望ましくない過剰な水準の供給が行われてしまうようなケースを指します。報告書は、現在の世界の食料消費額(9兆ドル)にくらべ、現在の外部性がその倍(19.8兆ドル)に及び、環境コスト(7兆ドル)、人類の健康被害コスト(11兆ドル)、経済コスト(1兆ドル)から構成されるとの分析結果を示しました。このことは、現在の食料の価格は、健康や環境に配慮すれば本来支払うべきコストよりもずっと安いことを意味しています。

外部性や市場の失敗の存在は、環境破壊だけでなく、適正な労働対価の未払いや食料安全保障や不健康問題などの社会的不正の原因となることで、現在および将来世代に意図しない負の影響をもたらします。報告書は、健康維持と環境保護のコストを反映させた価格に是正するための仕組みづくりを提案しています。

科学者グループは、7月8-9日に、国連食糧農業機関(FAO)主催で「国連食料システムサミット2021サイエンス・デイ」を企画、フードシステム転換のためのアクションに関する様々な対話を行うとのことです。


参考文献

Hendriks S et al. The True Cost and True Price of Food. A paper from the Scientific Group of the UN Food Systems Summit. Draft, 1 June 2021. 
https://sc-fss2021.org/wp-content/uploads/2021/06/UNFSS_true_cost_of_fo…;

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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