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334. 農村開発の再考

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334. 農村開発の再考

2021年5月、国連の経済社会局(UNDESA)より、World Social Report 2021が公表されました。今年のテーマは「農村開発の再考 Reconsidering Rural Development」です。 


世界において極度の貧困に直面している5人のうち4人が農村に住んでいるとされています。都市では極度の貧困に陥っている人々の割合が5.3%ですが、農村では18%にものぼります。報告書は、農村の誰一人も取り残さない開発として、地球環境保全や技術革新、国ごとの状況を十分に踏まえた農村開発の方向性を述べています。

報告書によると、世界の農村人口の7割ほどが低所得~低中所得国に住んでいるとされ、これらの国々における農村人口のシェアは60-67%にのぼります。報告書では、農村人口の都市への移動によらない、農村を農村として発展させるモデルも、日本を例にとりながら示しています。

国際農研では農村開発への取組として、農村を舞台に、農村の人々とともに環境保全や農業生産性と生活水準の向上をめざすアクションリサーチ型の研究を数多く行っています。そのうちの一つ、ガーナでは、小規模なため池を利用する組織的な灌漑の実現可能性を探るため、地元農村の男性グループや女性グループの結成と参加を得て、灌漑のための体制・規約の構築、参加者による灌漑管理、実践を通じたそれらの改善に取り組みました。その結果、規約に則った組織的な灌漑が行えること、収量を増やせること、葉物野菜向け灌漑が女性の所得向上に有効かつ地域住民の食生活の改善に幅広く貢献する可能性があることなどがわかりました。しかし、これらの組織的灌漑の継続には課題もあり、より深い現地理解と協働に基づく研究の推進により、課題解決に貢献していく必要があります。

現在、高所得国や中所得国では急激に少子高齢化が進んでいます。対照的に、低所得国ではしばらく人口増が続くことが予測され、食料需要を持続的に満たしていくための科学技術・農村開発は地球規模の重要な課題といえます。 国際農研は7月14日(水)、世界の農産物市場の動向をまとめた「OECD-FAO 農業アウトルック報告書」出版記念イベントをFAO駐日連絡事務所と協力して開催いたします。執筆者がライブ講演し、世界の食料安全保障を維持するために必要な戦略的な政策・科学技術分野について議論します。申込受付は本日17時となっております。ぜひ以下のリンクからご登録ください。

「OECD-FAO 農業アウトルック報告書」出版記念イベント
■日時:2021年7月14日(水)15:00~16:30
■開催:オンライン(Zoom)
■プログラム:https://www.jircas.go.jp/ja/event/2021/e20210714
■申込:https://www.jircas.go.jp/ja/event/2021/entry/oecd_fao_outlook
■締切:2021年7月12日(月) (本日)17:00 

参考文献
UNDESA World Social Report. https://www.un.org/development/desa/dspd/world-social-report/2021-2.html
岡直子、小出淳司、降籏英樹(2020). ガーナ北部の小規模ため池を利用した 農業者による組織的な灌漑の実現可能性と課題." 農業農村工学会論文集 311(88-2): 95-102.
岡直子、小出淳司、廣内慎司 (2020). ガーナ北部の女性グループによるため池を利用した野菜向け灌漑.水土の知88(12):23-26

(文責:農村開発領域 岡直子)

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