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304. 地球の危機を回避するために必要なネーチャーベースド・ソリューションへの投資額

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5月27日、国連環境計画(UNEP)は、自然保護のために必要なファイナンス事情(State of Finance for Nature)を公表、 気候・生物多様性・土地劣化という相互連関した危機に立ち向かうには、現在から2050年までネーチャーベースド・ソリューション:自然に基づく解決法(nature-based solutions)に投資すべき総額8.1兆ドル・2050年までに年間投資額が5360憶ドルに達する必要性があると推計しました。現状では投資は一年あたり1330憶ドル、世界GDPの0.1%相当であり、2050年までの必要額に4.1兆ドルのギャップが生じるとし、毎年の投資額を現在(1330憶ドル)から2030年までに3倍、2050年までに4倍増加させる必要があると訴えています。
 

そのためには、COVID-19 パンデミックからの持続的な回復を目指すだけでなく、環境に優しくない農業や化石燃料への補助金からネーチャーベースド・ソリューションを優遇する経済・規制インセンティブに構造的に転換する必要になります。報告書は、6月5日にローンチされる国連生態系回復の10年(the UN Decade on Ecosystem Restoration 2021-2030)やパリ協定等の枠組みの中、政府・金融機関・ビジネスに、森林再生・再生農業(regenerative agriculture)・海洋保全など自然への投資を増強する必要性を喚起しています。

報告書によると、これまでのところ、COVID-19対応の経済刺激策の2.5%程度しか自然資本保全策に振り分けられていません。現在のネーチャーベースド・ソリューション投資は、主に持続的農業・森林サプライチェーン、民間部門による生物多様性保護投資によるオフセット、慈善事業、多国間組織を通じた民間金融、そして森林や土地関係のカーボンマーケット分野に振り分けられています。一方現在の投資の殆どが公的資金に依存し、民間資本は2018年に180憶ドルで全体(1330憶ドル)の14%にとどまっています。気候ファイナンスでは民間資本が56%を占め、ネーチャーベースド・ソリューションにおいても民間資本を増やしていくことが課題となります。

森林管理・保護・再生を含む森林ベースの解決策だけでも、世界的に2030憶ドル必要とされ、これは2021年換算で世界市民一人当たり25ドル強に相当します。報告書は、森林再生と保全への金融支援を組み合わせる必要を訴え、森林・アグロフォレストリー面積を2020年比で050年まで3億ヘクタール増やす必要性を提起しています。

森林再生の取り組みにおいて、熱帯地域における森林の保全や利用・アグロフォレストリーの技術開発は極めて重要です。熱帯林は有用な木材樹種の宝庫ですが、その複雑な生態系を理解したうえで林業を行わなければ、森林の復元力と健康を維持しつつ優良な木材を生産し続けることはできません。国際農研は、東南アジアの有用樹種を対象とした熱帯林育成・保全技術開発に取り組んできました。このたび、国際農研が提案した課題「気候変動適応へ向けた森林遺伝資源の利用と管理による熱帯林強靭性の創出」が、令和3年度SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)新規採択研究課題として条件付き採択されました。 

参考文献
United Nations Environment Programme (2021). State of Finance for Nature 2021. Nairobi. https://www.unep.org/resources/state-finance-nature

(文責:林業領域 谷尚樹、岡裕泰、情報プログラム 飯山みゆき)