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292. 『グローバル・メタン・アセスメント』地球温暖化防止のためのメタン排出量削減のメリットとコスト

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メタンは非常に強力な温室効果ガスで、温暖化の原因の約30%を占めています。世界のメタン排出の半分以上が、化石燃料部門(人為的排出の35%、―石油・ガスの採掘・加工・流通)、廃棄物(20%‐埋立地や排水)、農業(40%‐家畜の堆肥や消化管内発酵が32%、稲作が8%)の3つのセクターから発生しています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のシナリオ分析によると、2030年までに、その他の温室効果ガス排出の削減と合わせ、世界のメタン排出は40-45%削減されなければなりません。

2021年5月に公表された、短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC)と国連環境計画(UNEP)による報告書『グローバル・メタン・アセスメント』によると、1980年代に人為的なメタンの排出量の記録が始まって以来、急速に増加していることから、国際的な行動が緊急に必要であることを強調しています。COVID-19パンデミックにより2020年に経済が減速し、二酸化炭素(CO2)の排出量が記録的な年にならなかったものの、大気中のメタンは記録的なレベルに達したことが米国海洋大気庁(NOAA)のデータにより示されています。

他方、メタンは何世紀にもわたって大気中に存在するCO2とは異なり、分解されやすく10年後にはほとんどがなくなってしまうため、短期的には地球温暖化の速度を急速に減少させることが可能です。報告書は、人間活動に起因するメタンガスの排出量は、現在既にある技術や手段を通じて、次の10年間に最大45%削減することができ、その結果、気候変動に関するパリ協定に沿って世界の気温上昇を1.5℃に抑えることができるとしています。

本報告書では、2030年までにメタンガスの排出量を30%削減することができる解決方法を紹介しています。 主に化石燃料の分野ではあるが、そのほとんど(約60%)は低コストで、半分は策を講じることで企業が利益を得られるものです。 さらに、国や地域によって対策は異なり、例えば、ヨーロッパやインドでは廃棄物分野、中国では石炭生産と家畜、アフリカでは家畜に続いて石油とガスが潜在的な可能性を持っていると報告しています。

国際農研は、アジアにおける畜産・水田からのメタン排出抑制技術の開発を実施し、また、窒素肥料効率化に貢献しうる作物メカニズム解明にかかわる国際研究ネットワークを主導しています。

 

グローバル・メタン・アセスメント(The Global Methane Assessment)
https://www.unep.org/resources/report/global-methane-assessment-benefit…

UNEP(The United Nations Environment Programme)
https://www.unep.org/

CCAC(Climate and Clean Air Coalition)
https://www.ccacoalition.org/en


(文責:情報広報室 金森紀仁)

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