平成28年12月1日、国連大学ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区)において若手外国人農林水産研究者表彰(農林水産省農林水産技術会議主催)の表彰式典が挙行されました。式典は、まず表彰式において、小林芳雄農林水産省農林水産技術会議会長の主催者挨拶に続き、来賓の皆様の挨拶、選考委員会の岩元睦夫座長より審査経緯の報告をいただきました。また、賞の授与では、小林会長より表彰状が、岩永勝JIRCAS理事長より甕・JIRCAS賞(奨励金の目録)が受賞者に授与されました。

表彰式に引き続き受賞者講演が行われ、受賞者による研究成果の発表が行われ、つつがなく式典を終えることができました。

本賞は、開発途上地域のための農林水産業及び関連産業に関する研究開発に優れた功績をあげている又はあげつつある若手外国人研究者を農林水産省農林水産技術会議会長が表彰するもので、今回が10回目です。受賞者と業績名は、次のとおりです。

食物残渣を利用したミミズ堆肥及びミミズ液肥のバイオ肥料の生産

Musaida Mercy MANYUCHI

受賞者名:Musaida Mercy MANYUCHI
(ムサイダ・マーシー・マンユチ)
ハラレ工科大学(ジンバブエ共和国)

 

[業績概要]

膨大な量の食物残渣及び農業廃棄物が発生し、そのほとんどがそのまま腐敗し、更なる温室効果ガスの排出につながっている。しかしながら、これらの食物残渣はミミズ堆肥化されることで、固形堆肥(vermicompost)及び液体堆肥(vermiwash)の形態のバイオ堆肥として生成される可能性を有する。ミミズ堆肥化の過程では、ミミズは当該食物残渣を餌にし、肥料としてそれらを排泄する。

ヤム遺伝資源の保全及び育種技術の改善へ向けた新たな手法

Gezahegn Girma TESSEMA

受賞者名:Gezahegn Girma TESSEMA
(ギャザヘン・ギルマ・テセマ)
国際熱帯農業研究所(IITA)(エチオピア連邦民主共和国)

 

[業績概要]

ヤムは、人類に莫大な利益を提供し、また広範囲に分布し栽培されているにも拘わらず、これまで積極的な研究対象とされず、孤児作物として扱われてきた。実際に、ヤムの分類を理解するための従来の分類学的同定を支援する取り組みは最低限に留まっているほか、その遺伝的多様性も十分に調査されてこなかった。更に、いずれの遺伝子がヤムの重要な形質に関与しているかについてもほとんど解明されておらず、倍数性、及び表現型の機能発現に対するその効果についての報告もほとんど存在しない。 従来の分類学的同定に役立つDNAバーコーディングシステムの確立、次世代シーケンシングを用いた遺伝子型決定法に基づく、ギニアヤム栽培種と近縁野生種との間の遺伝的多様性の理解、地上塊茎の生産における倍数性の効果の理解、並びに、開花及び性決定に関与する新たな候補遺伝子の発見といった本研究の成果は、上記の溝を埋めるものである。

精密食品加工:食品安全、食品防御、及び食品の品質確保のための食品の微生物学的、及び物理化学的特性に関する数理モデルの構築

Alonzo Alulod GABRIEL

受賞者名:Alonzo Alulod GABRIEL
(アロンゾ・アルロド・ガブリエル)
フィリピン大学ディリマン校(フィリピン共和国)

 

[業績概要]

従来の効果的かつ安価な低温殺菌法は、果汁などの熱感受性原料においては製品の品質劣化を招く。したがって、望ましくない品質変化を生じさせずに病原微生物を効果的に致死させる加熱処理工程の確立は、安全性及び品質に対する消費者の要求に応じる上で不可欠となる。加熱処理における重大な欠点は、その有効性が、原料、工程、及び微生物の特性の変化に依存することにある。したがって、個々の食品に特化した処理工程が必要となり、処理が不十分な場合は食品の安全性が損なわれ、過剰な場合は品質の許容範囲を超える製品が製造される可能性がある。 「精密食品加工」においては、特定の食品、工程及び標的生物の特性を考慮に入れた処理工程の確立が必要となる。この一連の研究では、特定の標的微生物を最初に決定し、その後に、加熱による不活化速度の予測モデルを確立した。次に、モデル予測された不活化速度、並びに食品及び処理工程に関連する変数を用いて、熱処理した果汁のビタミンC、色、及び消費者の受容性スコアにおける劣化予測のための新たな一連の予測モデルを確立した。食品の安全性及び品質に関するこれらのモデルは、標的生物に対する加熱処理工程の有効性の予測、及び処理工程が製品の全体的な品質に与える影響の予測に併用することができる。