研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- 西アフリカ・サヘル地域の農村における農地-集落系の窒素フローの評価(2009)
西アフリカ・サヘル地域では、農地から村に持ち込まれる収穫窒素物の66%は粗放管理畑に依存しているが、粗放管理畑への窒素供給は風成塵のみであり、窒素投入量から窒素持ち出し量を差し引いた値はマイナスである。一方、村からの廃棄物、家畜糞尿、屎尿は全て村に近い畑に投入されるため、これらの畑では4~13 t N 年-1(7~245 kg N ha-1 年-1)の窒素過剰となり、系内に窒素の偏りが生じ、少ない窒素資源が効率的に利用されていない。
- 西アフリカ・サヘル地域における持続的作物生産のための有機物資材の必要投入量は0.8 t C ha-1である(2009)
西アフリカ・サヘル地域における土壌有機物動態の予測に対し、既存の土壌有機物動態モデルRothamsted Carbon Modelの予測精度は、調査した全ての土壌管理技術において概ね良好であり、土壌有機物動態の長期的予測は可能である。検証したモデルによれば、持続的作物生産のための有機質資材の必要投入量は約0.8 t C ha-1である。
- アフリカイネ(Oryza glaberrima)の中には長期完全冠水において地上部を伸長させ成長できるものがある(2009)
アフリカイネO. glaberrimaは、冠水中に地上部が伸長することで冠水から逃れる性質いわゆる冠水抵抗性を示す。その洪水被害軽減のメカニズムは、冠水中の高伸長速度、水面上に抽出した葉の光合成機能と乾物生産能力の向上である。
- 熱帯多雨域を対象とする衛星観測情報を用いた土地利用データ作成手法の開発(2009)
観測条件の良いLandsatデータの年間取得数が極めて少ない場合でも、複数年分用いることで、地表面状態の年間の変化を推定し、土地利用を判別することが可能となる。これにより、雲の影響を強く受ける熱帯多雨域を対象とした30 mメッシュの土地利用データが整備される。
- 大メコン圏における経済統合が農業に与える影響評価と貧困解消を実現するための政策提言(2009)
大メコン圏の国境周辺地域の比較事例研究を通じて、農業分野の経済統合が、産地形成の進展、雇用機会の増大等により貧困解消に寄与している一方、競争激化により作目転換等を強いられている地域が存在し、激変緩和のための関係国間の政策調整が必要である。
- 未利用資源を活用した燃料ブロックの改良と普及方法の開発(2008)
モンゴル国において、在来技術である家畜ふんと石炭粉を混ぜて固めた燃料ブロック技術を改良するとともに、その普及を図るため行政が仲介する普及システムを考案し実証した。その結果、地域資源の有効活用が評価され、ウブルハンガイ県の「2009年度の経済と社会開発の基本方針」において本システムが導入され、小学校や幼稚園などの公的施設で実施される。
- 農村開発に資する植林による世界初のクリーン開発メカニズム(CDM)事業の国連登録(2008)
長期の収奪型農業により、土壌侵食、地力劣化の著しい小規模農民の居住地域において、植林及びアグロフォレストリーによる持続的な農村開発並びに温室効果ガスの吸収を目的としたクリーン開発メカニズム(CDM)事業を形成する手法を開発・実証し、国連登録を行った。
- MODISを用いて中国黒龍江省における水稲作付域の変化を把握する(2008)
広域観測が可能な衛星データであるMODISデータを用い、中国東北部の代表的稲作地帯である黒龍江省全域に渡る毎年の水稲作付域を把握する手法を開発した。これにより、近年継続的に水稲が作付けられている地域、また、作付域の拡大や縮小が見られた地域の空間分布が示される。
- 寒地稲作においては農家の栽培経験に応じた冷害リスク情報の伝達が重要(2008)
水稲栽培の歴史が比較的新しい中国黒龍江省においては、農家の冷害発生リスクに対する認識、さらには耐冷性品種の作付けという実際のリスク対応が十分に進んでいない。特に、栽培経験の浅い水稲作経営農家の持続的発展のためには、農家の栽培経験に応じた冷害リスク情報の伝達が重要になる。
- イネのオゾン耐性に関与する遺伝子座の検出(2008)
オゾン耐性に関わる品種間差異を検定し、Kasalathがオゾン耐性品種であることを明らかにした。感受性の日本晴とKasalathとの分離集団を用いたQTL解析から、葉の褐変化とバイオマス低下に関与する5つのQTLを同定した。オゾン耐性品種、および耐性遺伝子のQTLはオゾン耐性品種育成に有効に活用できる。
- ダイズの耐塩性を制御するQTLの同定(2008)
耐塩性簡易評価方法を開発し、広範囲のダイズ遺伝資源の耐塩性の検定により、栽培大豆(Glycine max)FT-Abyaraと野生ダイズ(G. soja)JWS156-1を耐塩性品種として選抜した。耐塩性のQTL解析の結果、栽培ダイズと野生ダイズにおいて同じ領域に効果の大きなQTLが検出され、両者が共通の耐塩性QTLを持つことが明らかになった。同定したQTLと連鎖するDNAマーカーはダイズの耐塩性育種に利用できる。
- 植物の乾燥ストレス応答経路を負に制御する新規タンパク質の発見(2008)
シロイヌナズナにおいて乾燥および高温ストレスに応答した耐性の獲得に寄与する転写因子DREB2Aと結合する新規タンパク質、DRIPを発見した。DRIPはDREB2Aの分解を促進することにより、乾燥ストレス応答を負に制御することを明らかにした。また、DRIPの機能欠損により乾燥ストレス耐性が向上することを示した。
- 一遺伝子系統の反応に基づいたイネいもち感染型の評価基準(2008)
イネいもち病の真性抵抗性遺伝子を個々に有する23種のLTH一遺伝子系統群に対する病斑の感染型による評価基準は、各遺伝子の抵抗性程度も考慮しており、正確な抵抗性や罹病性の判定に利用できる。
- ブラジルと日本のダイズさび病菌に対するダイズ品種の反応の違い(2008)
ブラジル及び日本のダイズさび病菌に対するダイズの抵抗性反応は、抵抗性遺伝子や品種によって著しく異なる。また、ブラジルの菌に抵抗性の品種は少なく、その抵抗性の程度も低い。ブラジルで育種に利用できる抵抗性遺伝子や品種の数は限定される。
- 西アフリカ・サヘル地域における風食抑制と収量増加を可能にする新たな省力的砂漠化対処技術「耕地内休閑システム」(2008)
サヘル地域における省力的砂漠化対処技術「耕地内休閑システム」を開発し、その有用性を実証した。本技術により、砂漠化の主要因である風食の大幅な抑制とトウジンビエの増収を達成できる。
- 前作にクロタラリア類を栽培すると東南アジアのトウガラシのネコブセンチュウ被害は大きく軽減できる(2008)
タイなどの熱帯地域において香辛料の原料として重要なトウガラシ(英名chili)で広がっているサツマイモネコブセンチュウの被害は、クロタラリアとの輪作により軽減できる。
- イネの少分げつ性遺伝子の高精度連鎖解析(2008)
イネ(Oryza sativa L.)品種合川1号の持つ低分げつ性に関わる遺伝子Ltnは、SSRマーカーssr6049-23とssr6049-2の間に位置しており、その候補領域は76.7kbpに絞られる。
- エアロビック・ライスの連作による収量漸減現象に非生物的要因が関与する(2008)
収量漸減現象が認められるエアロビック・ライス連作圃場からの採取土壌を用いたポット試験において、薬剤や熱処理によって生物的要因を排除してもイネの生育に有意な改善が見られないことから、この現象には非生物的要因が関与すると考えられる。
- 東北タイの塩類集積地域における持続的地下水利用可能量マップ(2008)
東北タイのBan Phai流域を例として、地下水流動モデル構築のための調査を実施し、分布型地下水流動シミュレーションにより持続的な地下水利用可能量マップを作成した。
- 東北タイの砂質傾斜農地における表面流出の発生メカニズムとため池の水位(2008)
東北タイコンケン近郊の砂質傾斜農地における表面流出は、粘土層の上にある砂質土層が飽和状態になった時発生し、ため池の水位上昇と強く関連している。