研究成果情報

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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら

  • 熱帯牧草Brachiaria humidicola の根から分泌する生物的硝化抑制物質ブラキアラクトンの同定(2009)

    熱帯牧草Brachiaria humidicolaの根から分泌される硝化抑制作用を持つ物質「ブラキアラクトン」を同定した。Brachiaria humidicolaを栽培した圃場の土壌ではアンモニア酸化が抑えられ、土壌からの亜酸化窒素発生が抑制される。

  • 幼苗期における在来品種の窒素反応は、改良品種よりも敏感である(2009)

    イネの相対乾物生産重率と吸収窒素あたりの乾物生産効率には、顕著な品種間差異が幼苗期で認められ、在来品種は改良品種よりも窒素に対する反応が敏感であり、効率的乾物生産が可能である。

  • SnRK2型タンパク質リン酸化酵素は乾燥耐性と種子休眠を制御する(2009)

    3種類のSnRK2型タンパク質リン酸化酵素の遺伝子が変異したシロイヌナズナでは、乾燥耐性や種子休眠性の低下、アブシシン酸に対する感受性の低下が見られ、これらのタンパク質リン酸化酵素は、アブシシン酸による乾燥耐性と種子休眠の制御において重要な役割を担う。

  • バイオマスの糖化に利用できる新規なキシラン分解酵素複合体(2009)

    通性嫌気性細菌Paenibacillus curdlanolyticus B-6は、強力なキシラン分解活性を有する新規の酵素複合体(約1,450 kDa)を生成する。この複合体は、骨格蛋白質(280 kDa, 260 kDa)及び4種類のキシラナーゼ活性を有するサブユニットにより構成され、キシランを含むバイオマスの糖化に利用できる。

  • 食品中の血糖値上昇抑制物質1-デオキシノジリマイシンの高感度定量法(2009)

    東アジア・東南アジアにおける伝統食品等に含まれ、食事後の血糖値の上昇を抑制する1-デオキシノジリマイシンは、高速陰イオン交換クロマトグラフィー・パルス電流検出法(HPAEC-PAD)を用いて、従来法より簡便に定量することができる。

  • コブミカン(Citrus hystrix)の葉に含まれる抗変異原物質フラノクマリンの同定(2009)

    東南アジアで広く食用に利用されているコブミカン(Citrus hystrix)の葉は、複素環アミン類等の変異原物質に対して強い抗変異原性を示す。コブミカンの葉に含まれる主要な抗変異原物質は、epoxypeucedanin及びepoxybergamottinである。

  • 海藻ジュズモ属の一種との混合飼育下でのウシエビの成長促進(2009)

    不要とされているエビ養殖池に繁茂する海藻(ジュズモ属の一種)をウシエビとともに飼育した。ウシエビは本種を積極的に摂餌し、稚エビ齢(16,44,58,93,128日齢)のいずれにおいても、海藻と混合飼育するとウシエビは良好な成長を示す。

  • 西アフリカ・サヘル地域の農村における農地-集落系の窒素フローの評価(2009)

    西アフリカ・サヘル地域では、農地から村に持ち込まれる収穫窒素物の66%は粗放管理畑に依存しているが、粗放管理畑への窒素供給は風成塵のみであり、窒素投入量から窒素持ち出し量を差し引いた値はマイナスである。一方、村からの廃棄物、家畜糞尿、屎尿は全て村に近い畑に投入されるため、これらの畑では4~13 t N 年-1(7~245 kg N ha-1 年-1)の窒素過剰となり、系内に窒素の偏りが生じ、少ない窒素資源が効率的に利用されていない。

  • 西アフリカ・サヘル地域における持続的作物生産のための有機物資材の必要投入量は0.8 t C ha-1である(2009)

    西アフリカ・サヘル地域における土壌有機物動態の予測に対し、既存の土壌有機物動態モデルRothamsted Carbon Modelの予測精度は、調査した全ての土壌管理技術において概ね良好であり、土壌有機物動態の長期的予測は可能である。検証したモデルによれば、持続的作物生産のための有機質資材の必要投入量は約0.8 t C ha-1である。

  • アフリカイネ(Oryza glaberrima)の中には長期完全冠水において地上部を伸長させ成長できるものがある(2009)

    アフリカイネO. glaberrimaは、冠水中に地上部が伸長することで冠水から逃れる性質いわゆる冠水抵抗性を示す。その洪水被害軽減のメカニズムは、冠水中の高伸長速度、水面上に抽出した葉の光合成機能と乾物生産能力の向上である。

  • 熱帯多雨域を対象とする衛星観測情報を用いた土地利用データ作成手法の開発(2009)

    観測条件の良いLandsatデータの年間取得数が極めて少ない場合でも、複数年分用いることで、地表面状態の年間の変化を推定し、土地利用を判別することが可能となる。これにより、雲の影響を強く受ける熱帯多雨域を対象とした30 mメッシュの土地利用データが整備される。

  • 大メコン圏における経済統合が農業に与える影響評価と貧困解消を実現するための政策提言(2009)

    大メコン圏の国境周辺地域の比較事例研究を通じて、農業分野の経済統合が、産地形成の進展、雇用機会の増大等により貧困解消に寄与している一方、競争激化により作目転換等を強いられている地域が存在し、激変緩和のための関係国間の政策調整が必要である。

  • 未利用資源を活用した燃料ブロックの改良と普及方法の開発(2008)

    モンゴル国において、在来技術である家畜ふんと石炭粉を混ぜて固めた燃料ブロック技術を改良するとともに、その普及を図るため行政が仲介する普及システムを考案し実証した。その結果、地域資源の有効活用が評価され、ウブルハンガイ県の「2009年度の経済と社会開発の基本方針」において本システムが導入され、小学校や幼稚園などの公的施設で実施される。

  • 農村開発に資する植林による世界初のクリーン開発メカニズム(CDM)事業の国連登録(2008)

    長期の収奪型農業により、土壌侵食、地力劣化の著しい小規模農民の居住地域において、植林及びアグロフォレストリーによる持続的な農村開発並びに温室効果ガスの吸収を目的としたクリーン開発メカニズム(CDM)事業を形成する手法を開発・実証し、国連登録を行った。

  • MODISを用いて中国黒龍江省における水稲作付域の変化を把握する(2008)

    広域観測が可能な衛星データであるMODISデータを用い、中国東北部の代表的稲作地帯である黒龍江省全域に渡る毎年の水稲作付域を把握する手法を開発した。これにより、近年継続的に水稲が作付けられている地域、また、作付域の拡大や縮小が見られた地域の空間分布が示される。

  • 寒地稲作においては農家の栽培経験に応じた冷害リスク情報の伝達が重要(2008)

    水稲栽培の歴史が比較的新しい中国黒龍江省においては、農家の冷害発生リスクに対する認識、さらには耐冷性品種の作付けという実際のリスク対応が十分に進んでいない。特に、栽培経験の浅い水稲作経営農家の持続的発展のためには、農家の栽培経験に応じた冷害リスク情報の伝達が重要になる。

  • イネのオゾン耐性に関与する遺伝子座の検出(2008)

    オゾン耐性に関わる品種間差異を検定し、Kasalathがオゾン耐性品種であることを明らかにした。感受性の日本晴Kasalathとの分離集団を用いたQTL解析から、葉の褐変化とバイオマス低下に関与する5つのQTLを同定した。オゾン耐性品種、および耐性遺伝子のQTLはオゾン耐性品種育成に有効に活用できる。

  • ダイズの耐塩性を制御するQTLの同定(2008)

    耐塩性簡易評価方法を開発し、広範囲のダイズ遺伝資源の耐塩性の検定により、栽培大豆(Glycine max)FT-Abyaraと野生ダイズ(G. soja)JWS156-1を耐塩性品種として選抜した。耐塩性のQTL解析の結果、栽培ダイズと野生ダイズにおいて同じ領域に効果の大きなQTLが検出され、両者が共通の耐塩性QTLを持つことが明らかになった。同定したQTLと連鎖するDNAマーカーはダイズの耐塩性育種に利用できる。

  • 植物の乾燥ストレス応答経路を負に制御する新規タンパク質の発見(2008)

    シロイヌナズナにおいて乾燥および高温ストレスに応答した耐性の獲得に寄与する転写因子DREB2Aと結合する新規タンパク質、DRIPを発見した。DRIPはDREB2Aの分解を促進することにより、乾燥ストレス応答を負に制御することを明らかにした。また、DRIPの機能欠損により乾燥ストレス耐性が向上することを示した。

  • 一遺伝子系統の反応に基づいたイネいもち感染型の評価基準(2008)

    イネいもち病真性抵抗性遺伝子を個々に有する23種のLTH一遺伝子系統群に対する病斑の感染型による評価基準は、各遺伝子の抵抗性程度も考慮しており、正確な抵抗性罹病性判定に利用できる。