ダイズさび病抵抗性遺伝子の集積系統
3つのダイズさび病抵抗性遺伝子を集積した系統は病原性の強いブラジル産のダイズさび病菌に対して高度の抵抗性を示す。この抵抗性系統と各遺伝子に隣接するDNAマーカーを利用して、戻し交配により既存の品種に抵抗性遺伝子を導入することができる。
背景・ねらい
ブラジル、アルゼンチン、パラグアイでは国際市場に流通する大豆の半分以上を輸出するため、これらの国々における大豆の持続的安定生産は極めて重要である。しかし2001年以降、ダイズさび病がこれら南米各国での大豆安定生産上の大きな阻害要因となっている。既知の抵抗性遺伝子を集積することによって得られる抵抗性を明らかにし、マーカー選抜育種に利用できる抵抗性遺伝子の集積系統を育種素材として開発する。
成果の内容・特徴
- 3つのダイズさび病抵抗性遺伝子Rpp2、Rpp4、Rpp5が分離するF2集団では、強病原性ブラジル産ダイズさび病菌(さび病菌群BRP-2)に対して、それぞれの遺伝子が異なる抵抗性を発揮する(図1)。また3つの遺伝子間には相互作用が検出される。
- 上記集団から育成した3遺伝子を全て抵抗性型ホモに持つ系統No6-12F3-1では、抵抗性遺伝子の元となる3品種、PI230970(No.3, Rpp2)、PI459025(Bing Nan, Rpp4)、PI200487(Kinoshita, Rpp5)やRpp2とRpp4の2遺伝子をホモに持つ系統と比較して、ダイズさび病菌(さび病菌群BRP-2および単病斑分離菌系BRP-2.1、BRP-2.5、BRP-2.6、BRP-2.49)の胞子堆や胞子の形成が極めて抑制される(図2)。
- この抵抗性系統と感受性品種との交配後代において3つの遺伝子の有無は隣接するマーカーによって判定できる。
成果の活用面・留意点
- 抵抗性遺伝子の両側に連鎖するDNAマーカーを利用して3つの抵抗性遺伝子を戻し交雑により感受性の品種等に導入することができる。
- 選抜マーカーと抵抗性遺伝子間の組換え等により3遺伝子を同時に保有する個体の頻度は理論値よりも低いため、より多くの交配種子を確保する必要がある。
- 反復親によっては、隣接する複数のマーカーから多型を示す選抜マーカーを選定しなければならない。
- 抵抗性遺伝子は、導入する品種の遺伝的背景と病原菌のレースによって発揮する抵抗性の程度が異なるため、図2と同程度に強い抵抗性を発揮するとは限らない。
具体的データ
- Affiliation
-
国際農研 生物資源・利用領域
- 分類
-
研究A
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
-
交付金 » 畑作安定供給
- 研究期間
-
2011年度(2010~2015年度)
- 研究担当者
-
山中 直樹 ( 生物資源・利用領域 )
見える化ID: 001770Lemos Noelle Giacomini ( 国際招へい研究員 )
- ほか
- 発表論文等
-
Lemos et al. (2011) Euphytica 182(1):53-64
Soybean Breeding Materials Useful for Resistance to Soybean Rust in Brazil
Yamanaka et al. (2011) JARQ 45(4):385-395
- 日本語PDF
-
2011_09_A4_ja.pdf137.67 KB
- English PDF
-
2011_09_A4_en.pdf221.17 KB