イネ・ダイズ等の低温及び乾燥環境下における主要転写経路の同定

要約

マイクロアレイを用いてイネ、ダイズ、シロイヌナズナの低温及び乾燥誘導性遺伝子を同定した。さらに網羅的にプロモーター解析を行い低温及び乾燥誘導性プロモーターに保存されているシス因子を同定して、主要転写経路を明らかにした。

背景・ねらい

環境劣化や異常気象に適応できる植物の研究は、農業及び環境問題において重要な課題になっている。本研究では、効率的に多くの遺伝子を制御できる形質転換植物を作出するために、イネ、ダイズ、シロイヌナズナにおける低温及び乾燥応答性遺伝子をマイクロアレイで同定し、さらに網羅的なプロモーター解析を行い低温及び乾燥誘導性プロモーターに保存されているシス因子を同定して主要転写経路を明らかにすることを目的とした。

成果の内容・特徴

  1. イネマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析では、低温(10°C)及び乾燥誘導性遺伝子は4,022及び4,632個同定され、発現が抑制される遺伝子は4,704及び5,189個同定される。様々なダイズ品種の網羅的な遺伝子発現解析をするために、新規ダイズマイクロアレイを作製した。新規ダイズマイクロアレイ用いた解析では、低温(4°C)及び乾燥誘導性遺伝子は、5,993及び4,433個同定され、発現が抑制される遺伝子は6,350及び5,098個同定される。
  2. ゲノム情報をもとにしたイネ、ダイズ、シロイヌナズナの機能分類では、低温環境下ではヘリケース遺伝子群、乾燥環境下ではDehydrinとLate embryogenesis abundant(LEA)遺伝子群の発現が特徴的に増加し、光合成関連遺伝子群の発現が特徴的に減少する(図1)。
  3. 網羅的なシス因子の頻度解析では、イネの低温誘導性プロモーターにはAbscisic acid-responsive element (ABRE)と新規のシス因子、ダイズにはABRE、Dehydration-responsive element (DRE)、representative coupling element3 (CE3)、シロイヌナズナにはDRE、Evening element (EE)、ABRE、の顕著な保存性が確認される。イネ、ダイズ、シロイヌナズナの乾燥誘導性プロモーターにはABRE、Gbox、CE3の顕著な保存性が確認される(図2)。
  4. 低温環境下におけるイネ、ダイズ、シロイヌナズナにおける主要転写経路はそれぞれの植物種で異なるが、乾燥環境下における転写経路は類似し、ABREを介した転写経路が主要である。
  5. 乾燥環境下における主要転写経路がABREを介していることが明らかになったため、ABREに結合するABRE結合転写因子(AREB)を利用した乾燥耐性作物の作出が効果的であることが示唆される。

成果の活用面・留意点

  1. イネ及びダイズの低温及び乾燥誘導性遺伝子を制御する主要なシス因子が同定されたため、有用な低温及び乾燥誘導性プロモーター選抜に利用できる。
  2. イネとダイズでは、AREBが効率的に多くの耐性遺伝子を制御できると示唆されたため、ストレス耐性形質転換植物の開発における有用遺伝子として有効と考えられる。

具体的データ

  1. 図1 低温及び乾燥応答性遺伝子の機能分類
  2. 図2 低温及び乾燥誘導性プロモーターにおけるシス因子の頻度分布
所属

国際農研 生物資源・利用領域

分類

研究A

研究プロジェクト

[環境ストレス耐性] 環境ストレス耐性作物の作出技術の開発

プログラム名

食料安定生産

予算区分

交付金 » 環境ストレス耐性

研究期間

2011年度(2011~2015年度)

研究担当者

圓山 恭之進 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 10425530
見える化ID: 001781

篠崎 和子 ( 東京大学 )

ほか
発表論文等

Maruyama et al. (2011) DNA Research (2012) 19: 37-49

日本語PDF

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English PDF

2011_07_A4_en.pdf117.08 KB