研究成果情報
研究成果情報を検索
国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- 2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジンの農耕地土壌からの亜酸化窒素放出抑制効果(2005)
2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジンは、硝化抑制と亜酸化窒素発生抑制効果が高く、土壌の微生物相に対する影響が小さく、取り扱いが容易であるので、硝化抑制剤として通常使用されているニトラピリンとジシアンジアミドに代替して亜酸化窒素放出を抑制する。
- タイ国コンケン県における農業生産に関わる窒素循環の1990年から2000年への変化(2005)
東北タイのコンケン県における窒素循環の1990年と2000年の比較を行ったところ、農地における窒素収支は-23 kgN/haの収奪から+10 kgN/haの蓄積に変化した。これは、化学肥料施用量と作物残渣還元量の増加によるものである。一方、家畜糞尿投入量が減少しており、有機物よりも化学肥料により、農業生産が支えられる変化が起きている。
- 西アフリカ・サヘル帯農地の土壌肥沃度管理の現状(2005)
西アフリカ・サヘル帯では低肥沃度土壌における低位作物生産性が農業問題の中心であり、改善技術の開発は急務の課題である。通常、技術開発を行うためには、在来手法の定量的な評価による現状問題の把握が重要であるが、同時に農民が在来の手法を行うに至った背景を理解しなければ、実践できる技術を開発していくことは難しい。本研究は、サヘルの農民が持つ在来の土壌肥沃度管理手法に着目し、農地の肥沃度管理の現状を総合的に理解することを目的とする。
- サイレージ用乳酸菌PS1-3株の実用化とその発酵品質改善効果(2005)
タイ国内のサイレージから分離・選抜した乳酸菌PS1-3株を実用化するため、安価な大量培養法を考案して乾燥菌体顆粒を調製した。また、適正添加量を安価に確保するため、この顆粒からの簡易な生菌数増殖法を考案した。この増殖菌体を添加して調製したサイレージの発酵品質は顕著に改善された。
- アルゼンチンチャコ・フォーモサ地域における冬季の農業副産物給与による育成雌肉牛の増体重改善のための推奨給与法(2005)
各種農業副産物の経済的推奨給与量と1kgの増体重に要する費用は次のようであった。
綿実:1kg/頭/日、US$0.26~0.33。小麦糠:体重の0.4%、US$0.36。 米糠:0.4%、US$0.52。綿実粕:体重の0.8%、US$0.39。生大豆:体重の0.5%、US$0.27~0.54。 - タイ東北部におけるサトウキビサイレージの肉牛用飼料としての利用(2005)
タイ東北部においてサトウキビ(株出し6ヵ月)サイレージの可消化養分総量は49.6%(乾物あたり)であり、本サイレージと本地域の飼料資源を用いることにより、肉牛生産ができる。一般的な暖地型牧草に比べ生産性が高くサイレージ適性に優れることから、肉牛飼養規模の拡大ができる。
- ヒハツモドキの成分ピペリンによる貯蔵穀物害虫の発育阻害(2005)
ヒハツモドキ(Piper retrofractum)など多くのコショウ属植物に含まれるピペリンはコクゾウムシ、ココクゾウムシ及びコクヌストモドキの発育を阻害する。
- マレーシア・サバ州におけるアカシアマンギウムの材質(2005)
マレーシア・サバ州で育林されたアカシアマンギウムの木材の密度と繊維長を調べた結果、成育の良し悪しにかかわらず密度と繊維長は髄から外側に向けて高くまたは長くなり、髄から9cm以上離れた部分で安定することを明らかにした。これらの結果は、直径18cm以上のアカシアマンギウムをより速く、より多く育てることができれば、安定した質の良い木材をより多く得ることができることを示している。
- アラキドン酸による熱帯性魚類の種苗生産技術の改善(2005)
アラキドン酸は熱帯性魚類において主要必須脂肪酸であり、飼餌料へ添加することで産卵成績や稚仔魚の生残率を改善し、安定した種苗生産に大きく貢献する。また、熱帯性魚類の親魚飼料の至適DHA:アラキドン酸比は少なくとも2、アラキドン酸:EPA比は3.5であることを新たに提案する。
- 生態系機能を利用した持続可能な循環型養殖システムモデル(2005)
持続可能なエビ養殖に果たす底生生物の役割を明らかにするとともに、生態系の生産機能と浄化機能を利用した環境にやさしい循環型養殖システムのモデルを開発した。
- ウシエビと海ぶどうの複合養殖(2005)
汽水産エビ類の低投資で持続的な複合養殖技術の開発を目指し、ウシエビ(Penaeus monodon)と食用緑藻類のひとつである海ぶどう(クビレズタ:Caulerpa lentillifera)の混合飼育を行った。海ぶどうは高い水質浄化能力(溶存栄養塩吸収能力および物理ろ過能力)を持つばかりでなく、エビ鰓への付着生菌数を減少させ、飼育水中の生菌数を安定させ、エビ類に隠れ家を提供した。加えて、海ぶどうは高い成長率を示し、施肥を必要としなかった。
- 沖縄の秋播栽培と北海道の春播栽培を組合せた小麦世代促進の早生化効果(2005)
沖縄の秋播栽培、北海道の春播栽培および暖地・温暖地の秋播栽培における出穂早晩性は、それぞれPpd・Vrn遺伝子型、Vrn遺伝子型およびPpd遺伝子型と密接に関係する。沖縄の秋播栽培と北海道の春播栽培を組合せた小麦世代促進は、暖地・温暖地で晩生を示す日長感受性個体を雑種集団から淘汰する効果を持つ。
- 養液・電照栽培したパッションフルーツの秋実には、機能性成分が多く含まれる(2005)
パッションフルーツの果実に含まれる主カロテノイドは、ζ-カロテンである。機能性成分とされるζ-カロテンとアスコルビン酸の含量は収穫時期の影響を受け、養液・電照栽培した秋実に多く含まれる。
- ミカンキジラミDiaphorina citri 成虫の放飼1日内の移動距離(2005)
カンキツグリーニング病のベクターであるミカンキジラミ (Diaphorina citri)の成虫は、風向に一致して風下に移動し、1日で350 m移動する個体が存在し 、平均移動距離は73.4 mである。
- 隣接カンキツ園への距離20m以内にあるカンキツ新植園での定植直後のミカンキジラミ防除の必要性(2005)
カンキツグリーニング病媒介虫ミカンキジラミ(Diaphorina citri)は、既存カンキツ園との距離が20m以内にある新植園には、定植後半月内で多数侵入し、1ヶ月内に第一世代を出現させ、その後個体群を維持する。既存カンキツ園までの距離が20m以内にある新植園は、定植直後より侵入個体の防除が必要である。
- グリーニング病激発地での無病苗の植付と薬剤施用によるカンキツ栽培延長・増収効果(2005)
カンキツグリーニング病激発地のベトナムのメコンデルタ地帯でのカンキツ品種キングマンダリンの栽培において、本病の媒介虫であるミカンキジラミ(Diaphorina citri)に対する浸透性薬剤と無病苗を利用した果樹園では、これらを利用しなかった果樹園に比べて栽培期間が1~2年間長く、所得も高い。
- 地中点滴灌漑では地表点滴灌漑に比べ初期生育が遅れるが、生育後期に根の活性を高めることでそれを補う(2005)
地中点滴灌漑では、地表点滴灌漑に比べ生育初期に養水分供給位置付近の根の分布が少ないため、生育が遅れる。一方、地中点滴灌漑では多くの根が養水分供給位置付近に達する生育後期に、根の活性が高まり生育が促進されることで初期生育の遅れが補われる。このことが、双方の灌漑方法における収量等の差が現れにくい要因である。
- 雨の少ないマリ共和国南部の浸透速度の低い圃場では、雨が肥料成分を地表面流出させ、収量低下をまねく(2005)
マリ共和国南部の水の浸透速度の低い圃場での作物の低収量の原因は、少雨でなく、雨による肥料成分の地表面流出である。この低収量は、緩効的施肥で改善される。
- 昼間の葉の相対含水率によるインゲンの高温・乾燥抵抗性系統の評価(2005)
高温や乾燥によりつるの伸長が大きく抑制される品種・系統ほど、インゲンの葉の相対含水率の低下が小さく、良好な光合成環境が保たれる。その結果として、種子収量の低下が抑えられる。
- 東北タイ農村における所得増加に対する農民意識と情報入手手段(2004)
家族内を中心とする限定的な情報入手手段への依存が強い農村では、自家内での個別的経営努力に対する評価が高いのに対し、農民グループによる主体的情報収集手段を持つ農村では、技術に対する評価・期待が高い。