ミカンキジラミDiaphorina citri 成虫の放飼1日内の移動距離
カンキツグリーニング病のベクターであるミカンキジラミ (Diaphorina citri)の成虫は、風向に一致して風下に移動し、1日で350 m移動する個体が存在し 、平均移動距離は73.4 mである。
背景・ねらい
カンキツグリーニング病は、東南アジアにおけるカンキツ栽培最大の生産阻害要因である。本病害はミカンキジラミ(Diaphorina citri)によって媒介されるため、本種の移動分散に関する研究は防除戦略を考える上で重要である。現在、本種の分布は屋久島まで確認されており、九州本土への侵入も懸念されている。本研究では、昨年度当センターで開発した標識法を用いて放飼試験を行い、放飼1日後の本種の移動距離および移動に関与する要因について明らかにする。
成果の内容・特徴
- 石垣島の試験圃場内で蛍光顔料粉末を用いて標識した(平成16年度国際農林水産業研究成果情報)ミカンキジラミ成虫2万頭を、放飼前日に標識して定着させたゲッキツ鉢を静置することで放飼し(図1)、放飼場所から半径50m間隔の同心円上(最大350m)の65箇所に配置した鉢植えのトラップ用ゲッキツ(図2)上に定着した標識虫の数を1日後に調査する。2005年5月と10月に各1回実施する。
- 5月の試験時には放飼日(2005年5月21日)の日平均風速は2.2m/s、日平均風向はSSWで、放飼1日後にはトラップ用ゲッキツ上で確認された標識虫数は516個体(放飼数の2.58%)である。そのうち79.5%の個体が放飼地点から風下にあたる北側の地点で確認され、最も移動した個体は北側の350m地点で確認された。516個体の平均移動距離は79.8mである(図3)。
- 10月の試験時には放飼日(2005年10月15日)の日平均風速は5.8m/s、日平均風向はNNEで、放飼1日後にトラップ用ゲッキツ上で確認された標識虫数は118個体(放飼数の0.59%)である。そのうち96.6%の個体が放飼地点から風下にあたる南側の地点で確認され、最も移動した個体は南側の200m地点で確認された。118個体の平均移動距離は66.9 mである(図4)。
- 以上の結果から、ミカンキジラミ成虫は風向の風下に移動分散し、放飼1日後の平均移動距離は73.4mであり、最大で350m移動する個体が存在する。
成果の活用面・留意点
- カンキツグリーニング病の総合防除法を構築する際の重要な基礎情報となる。
- 放飼1日後以降の移動分散についても調査する必要がある。
具体的データ
- Affiliation
-
国際農研 沖縄支所
- 分類
-
研究
- 予算区分
- 国際プロ〔カンキツHLB防除〕
- 研究課題
-
ミカンキジラミの移動分散特性の解明
- 研究期間
-
2005年度(2002~2008年度)
- 研究担当者
-
中田 唯文 ( 沖縄支所 )
- ほか
- 発表論文等
-
Nakata T. :Effective Marking Method using Micronized Fluorescent Powder for Population and Dispersal Studies of the Citrus Psyllid, Diaphorina citri Applied Entomology and Zoology, 投稿中
中田唯文 (2006):標識虫放飼によるミカンキジラミ成虫の移動実態について.日本応用動物昆虫学会第50回大会発表予定
- 日本語PDF
-
2005_seikajouhou_A4_ja_Part20.pdf685.83 KB