蛍光顔料粉末を用いたミカンキジラミの標識法
カンキツグリーニング病のベクターであるミカンキジラミは、蛍光顔料粉末を粉衣するダストマーキング法により標識できる。
背景・ねらい
カンキツグリーニング病は東南アジアにおけるカンキツ栽培最大の生産阻害要因である。本病害はミカンキジラミによって媒介され、本種の移動分散の実態を把握することは防除戦略を考える上で必要不可欠である。本種には移動分散の解明に有効とされる標識再捕獲法の適用例はなく、適用可能な標識法の種類やそれらの標識の持続期間等の基礎的な情報が知られていない。そこで、本種に対してダストマーキング法による標識法を適用した場合の飛翔行動に対する影響および標識の持続期間を明らかにし、本種の移動分散の研究のため、野外で用いることのできる標識法の確立を目指す。
成果の内容・特徴
- 蛍光顔料粉末(SINLOIHIFZ2800シリーズ、シンロイヒ株式会社)を標識資材として用いる。桃色の資材でミカンキジラミを標識することにより、目視による発見が容易になるので(図1)、この色の資材が本種の野外における移動分散の研究には好適と判断される。
- 標識されたミカンキジラミは、6時間後には非標識個体と同程度の飛翔能力を回復する(図2)。
- 標識虫は虫体表面の蛍光顔料粉末が表面積の30%以上であれば肉眼で識別でき、実験室内において40日以上肉眼で識別できる個体がある(図1と3)。
- 虫体に付着した蛍光顔料は、虫体表面の色素付着量が少なく肉眼では確認困難な場合でも、ブラックライトやUVランプの紫外線を照射することにより容易に確認できる。
- 実験室内では、標識残存期間中(最大40日)に死亡する個体は全くなく、非標識個体に比べ産卵量、オスのメス獲得数に差がなかったことより、標識による生存率や繁殖行動への影響はない(データ略)。
- 野外条件下(降雨あり)で、標識個体が20日後に放飼個体数の30%程度肉眼で確認できる(図4)。
成果の活用面・留意点
- ダストマーキング法を用いた標識再捕獲法により、ミカンキジラミの移動分散特性の解明が可能となる。
- 本手法を用いた標識後6時間以内の移動分散のデータは、移動に関して過小評価するおそれがあるため、粉衣後少なくとも6時間程度は放飼しない方が望ましい。
- 標識により、天敵に発見されやすくなる可能性がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 沖縄支所
- 予算区分
- 国際プロ〔カンキツHLB防除〕
- 研究課題
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ミカンキジラミの移動分散特性の解明
- 研究期間
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2004年度(2002~2008年度)
- 研究担当者
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中田 唯文 ( 沖縄支所 )
- ほか
- 発表論文等
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中田唯文(2005): ダストマーキングによるミカンキジラミの標識法. 日本応用動物昆虫学会第49回大会発表予定
- 日本語PDF
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2004_19_A3_ja.pdf661.53 KB