中国産淡水魚を用いた冷凍すり身の開発
中国産淡水魚のすり身を開発するため、魚肉タンパク質のゲル形成性を調べた。魚種によってゲル形成性は異なるが、適切な加熱条件を選択することによって、主要魚種であるハクレン、コクレン、草魚は冷凍すり身原料として利用できることを明らかにした。
背景・ねらい
中国淡水漁業資源の増産の一方で、流通・利用・加工などに関わる制度・施設・研究・技術開発が追いつかず効果的な利用が図られていない。こうしたポストハーベストの問題を解決するため、広域流通・安定貯蔵・多様な製品化を可能とする冷凍すり身の開発を目的とした。
成果の内容・特徴
- 中国産淡水魚から良質のすり身原料を探索するため、すり身のゲル形成性について調べ、海産すり身の主原料であるスケトウダラと比較した。ハクレン、コクレンはスケトウダラと似たゲル化パターンを示し、低温加熱(30°C付近)でゲル化し中温加熱(60°C付近)でゲルが崩壊する特徴を示した。草魚はスケトウダラとは異なる高原型のパターンとなり、低温加熱でゲル化しないが中温加熱ではゲルが崩壊しない利点を示した。(図1)
- 高品質すり身に要求される二段加熱(低温加熱後高温加熱を行う加熱法)の効果について調べた。ハクレン、コクレンはスケトウダラと同様に低温(30°C付近)および高温(85°C付近)の雨域でゲル化するので二段加熱によってゲル強度は高くなるが、草魚は低温でゲル化せず高温加熱のみのゲル化に依存し二段加熱の効果を示さなかった。(図2)なお、二段加熱による高いゲル化の化学反応は、主にミオシン重鎖の低温側での共有結合と高温側の非共有結合の組み合わせによって発現されるが、その境界温度は40°C付近であることが示唆された。
- 原料の鮮度限界を知るため、ハクレンを米蔵し人為的に鮮度を落としながら製造したずり身のゲル形成性を調べた。鮮度低下は、低温加熱でのゲル化能力の低下よりも、中温度帯でのゲルの崩壊に大きく影響したが、米蔵9日後でも依然として一定のゲル形成能力を保持していた。(図3)
成果の活用面・留意点
ハクレン、コクレンすり身は二段加熱によって高いゲル形成能力を示すが、加熱温度を誤るとゲルの崩壊を招くので温度の組み合わせが重要であること、草魚すり身はゲル形成能力は低いが、ゲルの崩壊を起こさないので加熱温度と時間の幅が広く、加工しやすい特徴を持つこと、また、かなり鮮度低下した原料でもすり身原料として許容できることなどが明らかとなった。以上で明らかにされたゲル形成性を充分に生かして加熱加工することで、これら冷凍すり身は食品工場やレストランで様々なゲル化食品を製造する場合の中間素材として利用可能であり、これまで中国には無かった新しいタイプの食品素材として多様な加工製品群を生み出すものと期待される。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 水産部
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上海水産大学
- 予算区分
- 中国農業[中国プロ]
- 研究課題
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中国淡水魚の高度利用研究
- 研究期間
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平成8~11年度
- 研究担当者
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福田 裕 ( 水産部 )
陳 舜勝 ( 上海水産大学 )
王 錫晶 ( 上海水産大学 )
周 麗萍 ( 上海水産大学 )
張 冬梅 ( 上海水産大学 )
- ほか
- 発表論文等
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福田裕・張冬梅・王錫晶・周麗萍 (1998) 中国淡水魚すり身のゲル化特性比較. 平成10年度日本水産学会秋季大会講演要旨集.
- 日本語PDF
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1998_16_A3_ja.pdf1.34 MB