研究成果情報

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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら

  • 複合経営のためのため池の水利用計画ツール(2007)

    ため池を利用して複合経営を実践するには、数か月先を見越した水利用計画を立てる必要がある。経験のない農家が各自のため池の水量、乾季中の水の蒸発量、経営規模に応じた野菜や家畜の水消費量を簡単に読み取って複合経営が計画できる、円盤状の農家向け水利用計画ツールを作成した。

  • 熱帯低肥沃砂質土壌の可給態窒素量は吸光度測定法で推定できる(2007)

    リン酸緩衝液を用いた土壌抽出液280 nmでの吸光度は、西アフリカサヘル域砂質土壌可給態窒素量と有意な関係が認められ、また、トウジンビエの初期生育乾物重とも有意な関係が認められることから、その土地の窒素肥沃度を推定することができる。本法は分光光度計を用いた簡易で迅速な方法であり、途上国で適用可能である。

  • タイにおけるブラーマン種成去勢牛の維持エネルギー要求量(2007)

    タイにおけるブラーマン種成去勢牛の維持に要する代謝エネルギー要求量は457 kJ/kgBW0.75であり,代謝エネルギーの生産時における蓄積利用効率は57.4%である。これは,日本飼養標準における黒毛和種去勢牛の維持に要する代謝エネルギー要求量の470 kJ/kgBW0.75とほぼ同様の値である。

  • 生しぼり豆乳を2段階で加熱すると豆腐の粘弾特性、保水性、歩留まりが向上する(2007)

    豆腐ゲルの形成に関与する大豆タンパク質変性温度に着目し、生しぼり豆乳を70°C10分→100°C5分の二段階で加熱すると、凝固剤を添加して調製される豆腐粘弾特性保水性歩留まりが向上する。

  • オイルパーム幹からの効率的燃料用エタノール及び乳酸生産法の開発(2007)

    伐採されたオイルパーム幹中に多量の樹液が存在し、樹液には高濃度のグルコースが含まれていることを見出した。この知見をもとに、オイルパーム幹の樹液から酵母及び乳酸菌を用いてエタノール及び乳酸を容易に効率良く生産できることを示した。

  • 食品中のγ―アミノ酪酸(GABA)の簡易迅速定量法の開発(2007)

    γ―アミノ酪酸(GABA)アミノ基転移酵素の作用を活用し、96穴マイクロプレートを利用して測定できるGABAの簡易迅速定量法を開発した。本法を用いることにより多検体の食品中のGABA含量を短時間かつ低コストで測定できる。

  • タイ北部の伝統大豆発酵食品トゥア・ナオから分離される納豆菌の遺伝資源としての有用性(2007)

    タイ北部の大豆発酵食品トゥア・ナオThua Nao)から分離される納豆菌(Bacillus subtilis (natto))は、日本の納豆製造用菌株と比べて遺伝的多様性に富み、アミラーゼ活性、ズブチリシンNAT活性、粘物質生産能などが顕著に高い菌株が見出される。

  • マレー半島マングローブ汽水域における餌料性甲殻類の生態特性(2007)

    半島マレーシア北西部の2ヶ所のマングローブ汽水域において、魚類の餌料として重要な小型甲殻類のアミ類(Mysida)及びアキアミ類(Acetesの生態調査を実施し、種群構成、生物量、時空間分布など汽水生態系の生産構造環境収容量の算出に欠かせない生態特性に係わる基礎知見を得た。

  • 低投資・環境共生型ウシエビ・海藻混合養殖技術の開発(2007)

    東南アジア諸国に多い小規模・零細エビ養殖業者も適用可能な低投資環境負荷の少ない安定したウシエビ養殖技術の開発を目指し、数種の海藻類との混合養殖実験を行った。シオグサ科植物およびクビレズタとの混合養殖は、エビの投餌量や養殖池環境維持費の削減を可能にし、従来の養殖法よりも生産効率を向上させた。

  • 開発途上国における高付加価値農業実現に向けての海外直接投資と食品製造業の役割(2006)

    アジア地域においては野菜・果樹や畜産等の付加価値の高い部門の生産が拡大するとともに、外国企業を中心とする食品製造業と農家との間で生産や販売に関する契約関係(垂直統合)が進展している。各国の農業付加価値の違いを統計的に分析した結果、農業生産における野菜・果樹の比率と食品製造業の付加価値が農業の付加価値向上に寄与することが解明された。また、外資比率の高い企業との契約農家は集荷業者に販売する非契約農家よりも高い労働生産性土地生産性を持っていることが確認された。

  • モンゴルの首都近郊における酪農の経営向上に関する要因(2006)

    首都ウランバートル近郊の集約的酪農世帯は、現状では純利益をあげている。搾乳牛一頭当りの乳量増加要因としては、濃厚飼料給与の増加と経営規模が大きいことが、また純利益率増加要因としては年間平均牛乳出荷価格の高いことと経営規模が大きいことが寄与している。

  • アジア開発途上地域の農業技術開発目標の重要度(2006)

    アジア開発途上地域の農業研究者、普及職員及び農家の間には、農業技術の開発目標の重要度や、技術開発目標の達成により期待される効果の認識に差がある。特に農業経営・技術普及に関する研究については、貧困解消への寄与が農家から期待されており、この分野の研究成果を農業技術政策へ反映させる努力が、研究開発への信頼醸成のために重要である。

  • 活性型に変換した転写因子の遺伝子DREB2Aを用いた乾燥・高温ストレス耐性植物の作出技術の開発(2006)

    植物の乾燥と高温の両方のストレス耐性の獲得に働く遺伝子群を制御する転写因子遺伝子の活性化に成功した。この活性化した遺伝子を導入した植物では、乾燥や高温ストレス時に機能する複数の耐性遺伝子が強く働くようになり、乾燥ストレスにも高温ストレスにも高いレベルの耐性を示した。地球温暖化等の環境劣化に対応した作物の分子育種への応用が期待される。

  • トウモロコシの乾燥・高温ストレス応答性遺伝子発現を制御する転写因子ZmDREB2Aを用いた環境ストレス耐性植物の作出(2006)

    シロイヌナズナのDREB2A遺伝子は植物の乾燥と高温の両方のストレス耐性の獲得に働くが、合成されたままでは活性を示さず翻訳後の活性化を必要とする。これに対して、トウモロコシZmDREB2Aタンパク質は活性化を必要とせず、ストレスによるmRNAのスプライシングによって機能が調節されていた。スプライシング後のZmDREB2A cDNAを導入した植物では、乾燥と高温ストレスに対して高いレベルの耐性を示した。

  • イネの鉄過剰耐性・亜鉛欠乏耐性の簡易検定法(2006)

    通常の水耕液に低濃度の寒天を添加することにより、急激なpH変化を抑制し、酸化還元電位の低下も再現でき、鉄過剰、あるいは亜鉛欠乏などの問題土壌に対するイネ品種簡易耐性検定における精度を向上することができる。

  • ブラジルにおけるダイズさび病菌の宿主(2006)

    アジア型ダイズさび病菌Phakopsora pachyrhizi)にとって最も感受性の高い宿主はダイズツルマメクズで、次いで、Neonotonia wightiiインゲンヒメノアズキライマメが高い。これらのうち、ブラジルでは野良生えのダイズや冬季潅漑栽培ダイズ、クズおよびN. wightiiが本病の伝染源として注意を要する。

  • 西アフリカ・サヘル帯へ導入可能なササゲ品種(2006)

    西アフリカ起源のササゲ遺伝資源からサヘル帯に導入可能な子実・飼料生産兼用品種を選定した。選定した品種は農民が栽培している品種より子実生産能力に優れ、密植によりさらにその生産量が高まる。

  • 西アフリカ・サヘル帯における作物残渣還元と化学肥料施用およびササゲとの輪作によるトウジンビエ生産量と土壌有機物の持続的向上(2006)

     西アフリカ・サヘル帯においては、トウジンビエ残渣還元化学肥料施用を組み合わせた肥培管理を行うことにより、砂質土壌に有機物が蓄積し、トウジンビエの生産量が増加する。また、家畜飼料として利用されているササゲ輪作に組み込むことにより、土壌有機物量はさらに高まり、トウジンビエの生産量もさらに増大する。

  • バッファーチャンバー方式ガス収支測定法(2006)

     閉鎖式チャンバーを測定チャンバーとバッファーに分割し、ガスを循環させ、バッファーのガス濃度変化を測定することで、精度の高い測定を行うガス収支測定法。安価なセンサーで計測装置を自作でき、とくに野外での計測に威力を発揮する。センサーの組み合わせで動物の代謝光合成蒸散地表面蒸発土壌呼吸などに幅広く利用できる。

  • 農民のエンパワーメントによる技術開発手法(2006)

    技術の核となる知識を、知識伝達用の技術によって農民に伝え、農民がこの技術を改変することで実用技術を得るという技術開発様式を提案する。知識伝達用の技術に単純かつ不完全な技術を用いると、農民の改変余地が大きく、改変意欲を引き出せる。