研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- ミカンキジラミDiaphorina citri 成虫の放飼1日内の移動距離(2005)
カンキツグリーニング病のベクターであるミカンキジラミ (Diaphorina citri)の成虫は、風向に一致して風下に移動し、1日で350 m移動する個体が存在し 、平均移動距離は73.4 mである。
- 隣接カンキツ園への距離20m以内にあるカンキツ新植園での定植直後のミカンキジラミ防除の必要性(2005)
カンキツグリーニング病媒介虫ミカンキジラミ(Diaphorina citri)は、既存カンキツ園との距離が20m以内にある新植園には、定植後半月内で多数侵入し、1ヶ月内に第一世代を出現させ、その後個体群を維持する。既存カンキツ園までの距離が20m以内にある新植園は、定植直後より侵入個体の防除が必要である。
- グリーニング病激発地での無病苗の植付と薬剤施用によるカンキツ栽培延長・増収効果(2005)
カンキツグリーニング病激発地のベトナムのメコンデルタ地帯でのカンキツ品種キングマンダリンの栽培において、本病の媒介虫であるミカンキジラミ(Diaphorina citri)に対する浸透性薬剤と無病苗を利用した果樹園では、これらを利用しなかった果樹園に比べて栽培期間が1~2年間長く、所得も高い。
- 地中点滴灌漑では地表点滴灌漑に比べ初期生育が遅れるが、生育後期に根の活性を高めることでそれを補う(2005)
地中点滴灌漑では、地表点滴灌漑に比べ生育初期に養水分供給位置付近の根の分布が少ないため、生育が遅れる。一方、地中点滴灌漑では多くの根が養水分供給位置付近に達する生育後期に、根の活性が高まり生育が促進されることで初期生育の遅れが補われる。このことが、双方の灌漑方法における収量等の差が現れにくい要因である。
- 雨の少ないマリ共和国南部の浸透速度の低い圃場では、雨が肥料成分を地表面流出させ、収量低下をまねく(2005)
マリ共和国南部の水の浸透速度の低い圃場での作物の低収量の原因は、少雨でなく、雨による肥料成分の地表面流出である。この低収量は、緩効的施肥で改善される。
- 昼間の葉の相対含水率によるインゲンの高温・乾燥抵抗性系統の評価(2005)
高温や乾燥によりつるの伸長が大きく抑制される品種・系統ほど、インゲンの葉の相対含水率の低下が小さく、良好な光合成環境が保たれる。その結果として、種子収量の低下が抑えられる。
- 東北タイ農村における所得増加に対する農民意識と情報入手手段(2004)
家族内を中心とする限定的な情報入手手段への依存が強い農村では、自家内での個別的経営努力に対する評価が高いのに対し、農民グループによる主体的情報収集手段を持つ農村では、技術に対する評価・期待が高い。
- 農家圃場レベルの降雨栽培暦を用いた年次・年内降雨変動の把握と農家の作付け選択の支援(2004)
農家圃場に気象観測装置を設置し、日降雨量と作付け選択を農家レベルと村落レベルの栽培暦に表示し、農家の播種と雨期の開始を把握することができる。西アフリカ・マリの年間雨量800mm 半乾燥地帯では10mm以上の降雨イベントが 7日間以内に2回ある前に播種すると苗立ちが悪くなり、再播種の必要性が高まる。年間雨量1200mm半湿潤地帯では農家は栽培暦を利用して播種を早めることができた。
- 農業社会化服務体系の整備における農民合作組織(2004)
農民合作組織(専業協会、新型合作社)の組織化は、農業産業化経営を補完するものとして取り組まれるようになったものであるが、農業社会化服務体系の中で経済的・技術的において中心的な役割を果たしつつあり、政府収入の乏しい地域で農業技術普及組織が変容する中で、従来の中国の農業の生産流通を大きく変える可能性を有している。
- 東北タイ・天水農業地域における水文立地解析モデルの開発(2004)
東北タイ・コンケン周辺地域を対象に、日雨量を入力データとして小流域の水文過程を再現するシミュレーションモデルを構築した。このモデルに米収量推定モデルを結合することによって、流域内における面的な米収量の推定が可能である。
- 乾燥誘導性のZinc-Finger型転写因子遺伝子を用いたストレス耐性植物の開発(2004)
環境ストレス時には特異的遺伝子の発現が押さえられる。遺伝子発現を押さえる働きを持つリプレッサーとして4種のZinc-Finger型転写因子の遺伝子を明らかにした。これらの遺伝子のうち乾燥や塩や低温によって誘導されるSTZ遺伝子の過剰発現体はストレス耐性を示し、ストレス時に遺伝子発現をおさえて植物に耐性を付与すると考えられた。
- イネいもち病抵抗性遺伝子「Pish」は第一染色体長腕に位置する(2004)
イネいもち病の抵抗性遺伝子Pishは、イネ第一染色体長腕上のSSR マーカーRM212とOSR3と間に、それぞれ7.9および15.2cMの距離をもって座乗する。
- インドネシア西ジャワ熱帯高原におけるキャベツ根こぶ病被害抑制のための好適輪作作物(2004)
インドネシア西ジャワのキャベツ根こぶ病激発圃場に8ヶ月間各種作物を導入した場合、レタス、ダイコン、ニンニクは休閑を上回る根こぶ病被害軽減効果を示し、ジャガイモおよびネギは休閑とほぼ同等である。一方、ニンジン、ラッカセイおよびインゲンマメ、トウガラシは休閑の効果を下回る。休閑でも、2作期間により大幅に被害軽減を出来るので、根こぶ病抑制のための自由度の高い短期輪作が構成出来る。
- 東北タイにおける臭素を用いた不飽和帯での土壌水の追跡(2004)
地表に散布した臭素を100mLコアと遠心分離器を用いて回収し、その濃度分布から土壌水を 追跡する方法を東北タイの試験地に適用し、土壌面蒸発量や降水の浸透量を解析した。
- 地表水のラドン濃度測定のための簡便な濃縮装置の開発と応用(2004)
途上国でも設置可能な濃縮装置により、地表水のラドン濃度を容易に測定することができ、地下水の湧出地点の特定などに応用できる。
- ケニア産オオタバコガに対する有用天敵2種の寄生特性(2004)
ケニアのオオタバコガHelicoverpa armigera幼虫に対して、捕食寄生性昆虫であるヤドリバエ2種(Drino zonata, Linnaemya longirostris)が天敵として有望であり、2種共存下で共倒れしないのでこの2種を併用する事が可能である。
- イネに共生する窒素固定エンドファイトの新規グループ(2004)
圃場で栽培したイネからnifH 遺伝子を培養を介さずに検出すると、既分離の窒素固定細菌のnifH 遺伝子との相同性が低い配列が多数見つかり、これらは独立した一つのクラスターを形成する。RT-PCRでこのクラスターの割合が高いことから、新規グループの窒素固定エンドファイトがイネでは重要な役割を担っていることが示唆される。
- メコンデルタにおける米ヌカ主体豚飼料へのサトウキビ・シロップ添加効果(2004)
米ヌカを主体とした飼料中にサトウキビ・シロップを4%添加することにより、豚の増体、飼料要求率が改善される。また、米ヌカを主体としながらサツマイモ茎葉を乾物当り10%配合した飼料中にサトウキビ・シロップを3%添加することにより、増体、飼料要求率及び粗タンパク質、粗脂肪等の消化率が改善される。
- めん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fのアジアにおける地理的分布と日本への小麦伝播経路(2004)
良いめん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1f のアジア地域における地理的分布から、日本への伝播経路は、中国からの直接伝播ルート(めんロード)と朝鮮半島経由の2つの伝播ルートが考えられた。
- シトロネラオイルによるコクゾウムシ及びカビの防除(2004)
熱帯のイネ科植物シトロネラグラス(Cymbopogon nardus)の精油に含まれるテルペン類はコクゾウムシ及びカビの発生を抑制し、穀物貯蔵に利用できる。