食品中のγ―アミノ酪酸(GABA)の簡易迅速定量法の開発

国名
タイ
要約

γ―アミノ酪酸(GABA)アミノ基転移酵素の作用を活用し、96穴マイクロプレートを利用して測定できるGABAの簡易迅速定量法を開発した。本法を用いることにより多検体の食品中のGABA含量を短時間かつ低コストで測定できる。

背景・ねらい

γ-アミノ酪酸(GABA)は、天然界に広く存在するアミノ酸の一種である。血圧降下作用や、精神安定作用などの生理機能性が知られており、この作用を期待し、GABAを添加、あるいは強化した食品が多く製造されている。GABAの定量分析は、混在する種々のアミノ酸の影響を排除するために、アミノ酸分析計やHPLC等の機器を用いた分離分析法により行われている。しかし、これらの手法では、高額機器を必要とする上に、多検体を同時に分析することが出来ない。そこで、多検体の食品中のGABA含量を簡易に測定可能な比色分析法を開発した。

成果の内容・特徴

  1. 測定原理を図1に示す。γ-アミノ酪酸アミノ基転移酵素反応及びコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素反応を共役させることにより、特異性が高く、高感度な検出が可能である。
  2. 分析操作は以下のように行う。50ppmまでのGABAを含有する試料を96穴マイクロプレートに分注し、Pseudomonas fluorescens由来γ-アミノ酪酸アミノ基転移酵素、コハク酸セミアルデヒド脱水素酵素、α-ケトグルタル酸及びNADP+を加え、30°Cで15分間反応させた後、酸性で反応を停止させる。これに電子伝達体1-メトキシフェナジンメタスルフェート(1-MeO-PMSH)及びテトラゾリウム塩WST-8を加え、還元による水溶性ホルマザンの発色を470nmの吸光度により測定する。
  3. 図2に示す検量線が得られ、優れた定量性を示す。精白米・玄米・発芽玄米の水抽出物中のGABA含量を本法及びHPLC法によって測定し比較したところ、図3のように、高い相関が得られた。
  4. 本法はGABAに対し高い特異性を有しており、GABA標準試料に100ppmのグルタミン酸、セリン、グリシン、ヒスチジンを添加しても妨害されることなく、同様の検量線が得られ、これらのアミノ酸が混在する食品中のGABA含量の分析に用いることができる。
  5. タイ産の各種玄米試料の水浸漬処理による、GABA含量の変化を本手法により測定したところ、低温乾燥米と天日乾燥米ではGABA含量の増加が確認された。一方、タイにおいて雨期に広く適用されている高温乾燥処理されたコメではGABAの増加は認められず、高温乾燥によるGABA生成酵素の失活が反映されたことから、本法の妥当性が示された。

成果の活用面・留意点

  1. 96穴マイクロプレートを使用し、簡易な操作で行えるため、多検体の同時定量が可能である。
  2. GABAを多く含有する食品では50ppm以上含まれており、50ppm以上のGABA含量が予想される場合は、試料を希釈し、定量をおこなう。
  3. 検量線は、測定毎に作成する必要がある。
  4. 発色のために加える電子供与体とテトラゾリウム塩は、8連ピペットで迅速に加え、添加後は30分以内に測定する。
  5. 簡易な定量においては、標準溶液との発色の目視による定量も可能である。特に、一定量のGABA含量を確認する場合には有効である。
  6. 有色物質や油脂の混入等に対しては、適切な前処理を行うことで定量が可能である。

具体的データ

  1.  

    図1 GABA定量の原理
    図1 GABA定量の原理
    γ-アミノ酪酸アミノ基転移酵素(GABA-T)及びコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素(SSADH)でNADP+からNADPHへの変換を行い、電子伝達体を介してWST-8(赤色)を還元して生成する水溶性ホルマザン(黄色)を測定することで、GABAを定量する。
  2.  

    図2 GABA標準試料を用いた検量線
    図2 GABA標準試料を用いた検量線
    相関係数は0.999であり、50ppmまで高い直線性を示した。
  3.  

    図3 プレカラム誘導体化HPLCでの定量と本法の比較
    図3 プレカラム誘導体化HPLCでの定量と本法の比較
    各種コメ試料では、非常に高い相関(0.999)を示す。このことから、HPLCに同等の精度での定量が可能である。
  4.  

    図4 タイにおける各種品種でのGABA生成能の検討
    図4 タイにおける各種品種でのGABA生成能の検討
    高温乾燥を経た試料では、内在酵素の失活のため浸漬処理によるGABA生成が起こらないと考えられ、本手法によるGABAの定量は妥当な結果を示した。
Affiliation

国際農研 利用加工領域

分類

研究

予算区分
交付金〔高付加価値化〕
研究課題

アジア農産物の高付加価値化

研究期間

2007年度(2006~2011年度)

研究担当者

吉橋 ( 利用加工領域 )

VARANYANOND Warunee ( カセサート大学食品研究所 )

TUNGTRAKUL Patcharee ( カセサート大学食品研究所 )

Surojanametakul Vipa ( カセサート大学食品研究所 )

ほか
発表論文等

特許出願 特願2008-106488

日本語PDF

2007_seikajouhou_A4_ja_Part16.pdf405.56 KB

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