2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジンの農耕地土壌からの亜酸化窒素放出抑制効果

要約

2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジンは、硝化抑制亜酸化窒素発生抑制効果が高く、土壌の微生物相に対する影響が小さく、取り扱いが容易であるので、硝化抑制剤として通常使用されているニトラピリンとジシアンジアミドに代替して亜酸化窒素放出を抑制する。

背景・ねらい

農耕地土壌は、温室効果ガスでありオゾン層の破壊に関与する亜酸化窒素(N2O)の最大の人為的発生源である。硝化抑制剤は農地からの窒素溶脱を防止して肥効を高める目的で利用されている。ニトラピリンは強力な硝化抑制剤で主として北米の農業現場で使用されているが、水に難溶性であり、固体(粉体)の窒素肥料に添加することが困難である。取り扱いが容易で、土壌からの亜酸化窒素放出を抑制する効果の高い硝化抑制剤を選定することを目的に、2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジン(AM)、サルファチアゾール、1-アリル-2-チオ尿素を供試し比較検討した。

成果の内容・特徴

  1. 土壌インキュベーション実験の結果では、AMを窒素肥料と一緒に添加することで土壌からの亜酸化窒素放出を抑制した。抑制の効果はニトラピリンよりやや弱かったが、サルファチアゾールおよび1-アリル-2-チオ尿素よりも強かった(表1)。
  2. AMを添加することによる土壌呼吸活性への影響は見られなかった。
  3. 農業上重要な細菌のうち7種類(Bacillus megaterium, Bacillus subtilis, Alcaligens faecalis, Pseudmonas fluorescens, Bradyrhizobium japonicum, Azospirillum sp., Herbaspirillum sp.,)について、単培養を行いAMが増殖速度に及ぼす影響を調査したが、顕著な増殖抑制効果は見られなかった(表2)。2と併せて、AMの硝化細菌以外への影響は大きくないことが示された。
  4. 上記の結果から、AMは亜酸化窒素放出を抑制することが確認され、通常使用されているニトラピリンとジシアンジアミドに替わる取り扱いが容易な硝化抑制剤として利用できると判断された。

成果の活用面・留意点

  1. 温室効果ガス排出削減技術として地球温暖化抑制に貢献できる。
  2. 硝化抑制剤は硝化の副産物として生成される亜酸化窒素の比率を低下させる働きがあるが、脱窒に対する影響はあまりないと思われるので、脱窒に伴う亜酸化窒素放出を抑制する効果は期待できない。

具体的データ

  1.  

    表1
  2.  

    表2
Affiliation

国際農研 生産環境部

分類

研究

予算区分
基盤〔窒素変換過程〕
研究課題

硝化細菌による窒素変換過程に及ぼす土壌条件の影響

研究期間

2005年度(2003~2005年度)

研究担当者

渡辺 ( 生産環境部 )

TRIMURTULU Nunna ( アチャーヤNGランガ農業大学 )

ほか
発表論文等

Takeshi Watanabe (2006): Influence of 2-chloro-6 (trichloromethy) pyridine and dicyandiamide on nitrous oxide emission under different soil conditions, Soil Science and Plant Nutrition,52(2),226-232

渡辺武(2004): アンモニア酸化菌と亜硝酸酸化菌の比活性が亜酸化窒素生成比率に与える影響.日本土壌肥料学会2004年度大会講演要旨集, 192

日本語PDF

2005_seikajouhou_A4_ja_Part7.pdf477.6 KB

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