研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- ガーナの精米業の効率性分析:農家への無利子の融資により籾米を確保する精米業者(2003)
ガーナの大型精米機を所有する多くの精米業者が、籾米集荷のために無利子で農家へ融資を行い、その結果、融資のない場合に比べて精米機の稼働率(Capacity Utilization)が24%上昇することを経済モデルにより明らかにした。これは農家に資金需要がある限り望ましいことであるが、同時に金融市場の不完全性を意味する。市場の効率性確保のために籾米の貯蔵施設等の整備が望まれる。
- イネの環境ストレス誘導性遺伝子の網羅的解析とストレス誘導性プロモーターの単離(2003)
イネのcDNA マイクロアレイ解析によって73個の乾燥・塩・低温ストレス誘導性遺伝子が同定される。そのうち5種の遺伝子から単離したプロモーターは有効な発現の組織特異性とストレス誘導性を示す。
- 赤かび病抵抗性コムギ品種・蘇麦3号の品種内変異(2003)
赤かび病抵抗性コムギ品種蘇麦3号には、形態的、生態的特性が異なる系統が存在する。全染色体領域にわたるSSR マーカーを用いて品種内の変異を見ると、CIMMYT 配布の3系統には変異は無く、オーストリア系統は13.2%、日本の2系統には19.4%と0.4%のマーカー変異が認められる。
- コムギのAFLP マーカーを効率的にSTS 化するためのExtension-AFLP法(2003)
AFLP マーカーの選抜プライマーに塩基を付加した4種の3次選抜プライマーを用いてnestedPCR を行うExtension-AFLP 法は、多型を示すターゲットDNA 断片を効率的に選抜する方法である。これにより、コムギのAFLP マーカーを効率的にSTS 化できる。
- 中国東北部大豆遺伝資源の特性とその遺伝的多様性(2003)
中国吉林省農業科学院大豆研究所で保存している中国東北部の大豆遺伝資源のうち、調査した計3,012点の主要形質に関するデータベースを構築した。中国東北部大豆遺伝資源は、日本の大豆とDNAレベルでも大きく異なり、また遺伝的多様性に富んでいる。
- マンゴーおよびその近縁種の遺伝的多様性と類縁関係(2003)
DNA マーカーにより、Mangifera 属のマンゴーおよびその近縁種の遺伝的多様性ならびにそれらの類縁関係を明らかにできる。また同じ手法によってMangifera 属における高精度の品種識別が可能である。
- イネいもち病抵抗性に関する新国際標準判別品種シリーズの開発(2003)
24種類のイネいもち病抵抗性遺伝子を対象とした判別品種シリーズとしてのモノジーニックライン(一遺伝子導入系統)群および遺伝的背景が均一な同質遺伝子系統群を育成した。これらは国際的な標準判別品種として活用できる。
- イネの低分げつ性遺伝子の同定(2003)
日本型イネ品種合川1 号および秀峰の低分げつは,単一の同じ優性遺伝子Ltn(t)により支配されており,第8 染色体長椀上のDNA マーカー,RM149 とXNpb56 の間に位置している。
- 中国太湖地域の農業集水域からの地表水による窒素の流出(2003)
江蘇省宜興市梅林集水域からの地表水移動にともなう窒素流出量は、域内施肥窒素量の8.5 %にあたる20.3 kg ha-1 y-1 であり、主要作物の施肥時期に増大するが、水稲生育の旺盛な7~9月に減少する。野菜畑・畑地では表面流去窒素量および土壌侵食量が大きい。
- 熱帯地域における非作付け期の土壌乾燥に起因する生育抑制(2003)
水稲の長期連作試験において、非作付け期に土壌を乾燥させると、リン欠乏により特に初期の成育抑制とそれによる収量の低下が見られる。これは土壌排水により二価鉄が酸化され、それに伴って可給態リン量が減少することが一因となっている。
- 水稲の耐倒伏性関連形質のQTL 解析(2003)
インディカ・ジャポニカ交配後代の半数体倍加(DH)系統の押し倒し抵抗値、地上部形態形質、根系形態形質など耐倒伏性に関係する形質の量的形質遺伝子座(QTL)はそれぞれ複数の染色体上に散在し、押し倒し抵抗値ではQTLは第7,8染色体上に存在する。
- イネ科作物のタンパク態窒素利用特性(2003)
イネ科作物は、その施用窒素形態に対する反応から、無機態窒素の供給が十分でない場合に有機態窒素とくにタンパク態窒素も積極的に利用するソルガム、イネ(陸稲)のタイプと、無機態窒素のみを利用するトウモロコシ、パールミレットのタイプとに分かれる。
- イネのアルミニウム耐性のメカニズムと耐性品種の迅速スクリーニング手法(2003)
イネのアルミニウム耐性には、コムギの場合とは異なり、根端におけるAlとCaの相対保持量が大きな役割を果たしている。このメカニズムに基づいて、より迅速に耐性品種を選抜することができる。
- ラドン・水収支法によるため池への地下水浸入と貯水の地下浸出の定量解析(2003)
ラドン収支式と水収支式を用いた解析法により、従来法では困難であったため池への地下水浸入と貯水の地下浸出を定量することができる。
- シロアリのアリ塚周辺では牧草の生産力と栄養価、及び放牧牛の採食頻度が高まる(2003)
草地上の有機物が集積・分解されるアリ塚周囲では、土壌は窒素含有率が高く、牧草も高栄養・高生産力を示す。放牧牛はそれらの牧草を多頻度に採食する。このことは一般的にタンパク供給力が低い熱帯草地において、アリ塚の分布が放牧牛の採食行動、特にタンパク質等の栄養摂取に重要な役割を果たすことを示唆する。
- 窒素固定エンドファイトのイネでの組織内定着性評価の実験モデル開発(2003)
窒素固定エンドファイトのイネへの試験管内での接種法を確立できた。培養法と光学および電子顕微鏡観察等を組み合わせて植物内での接種細菌の感染状況を解析することにより、接種細菌の組織内定着性を明らかにできる。
- 熱帯のサイレージ醗酵に適した優良乳酸菌(2003)
タイ国で良質サイレージを調製するための乳酸菌を熱帯対応型改良パウチ法を用いて検索し、高温(45 °C)下に速やかに増殖して多量の乳酸を生成する優良乳酸菌株を分離した。分離株は少ない菌接種量でも共存する酵母やコリ型細菌の影響をあまり受けず、接種量を増やすと乳酸量が増大し、共存他種微生物の生菌数を低下させた。
- ベトナムメコンデルタにおける低利用飼料資源を用いた豚の購入飼料代替と肉質の改善効果(2003)
養豚用飼料として米糠、破砕米が多給される地域において、ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)、ウォータースピナッチ(Ipomoea aquatica)等の低利用飼料資源を給与することにより、増体、飼料要求率には悪影響を与えず、背脂肪厚、背脂肪ヨウ素価等の肉質も改善され、農家の収入増加に役立つ。
- ベトナム・メコンデルタの養豚農家における豚コレラの診断と損耗対策(2003)
ベトナム・メコンデルタでは子豚の致命的疾病として豚コレラが重要な原因であることが明らかとなった。予納接種を効果的に行うためには、市販ワクチンの一本化と接種時期の適正化、普及ワクチンでは母豚は6カ月毎に種付け前の接種、子豚へは生後1月目の接種が必要である。
- 中国における発酵型ビーフンの物理化学特性(2003)
原料インディカ米を乳酸発酵させると、調製されたビーフンの破断強度が減少し、破断変位が増加する。発酵過程において原料米の澱粉含量に顕著な変化は認められないが、タンパク質・脂質・灰分が減少する。また、発酵によって澱粉の糊化温度が低下し、ラピッドビスコアナライザーによる粘弾特性も変化する。