イネいもち病抵抗性に関する新国際標準判別品種シリーズの開発

要約

24種類のイネいもち病抵抗性遺伝子を対象とした判別品種シリーズとしてのモノジーニックライン(一遺伝子導入系統)群および遺伝的背景が均一な同質遺伝子系統群を育成した。これらは国際的な標準判別品種として活用できる。

背景・ねらい

   イネいもち病抵抗性に関する判別品種として、出来るだけ多くの抵抗性遺伝子を対象とする、同質遺伝子系統を開発する必要がある。ただし、同質遺伝子系統の育成には多年月を要するので、国際イネ研究所(IRRI)において、同質遺伝子系統群の育成を進めるとともに、遺伝的背景は系統間で必ずしも均一ではないが一抵抗性遺伝子のみを導入したモノジーニックライン(一遺伝子導入系統)群を育成し、国際的に適用できるいもち病抵抗性判別品種シリーズを開発する。また育成される系統は、IRRIの International Network for Genetic Evaluation of Rice (INGER)等とも協力し、関連研究機関へ配布・普及を計る。

成果の内容・特徴

  1. モノジーニックライン(一遺伝子導入系統)群としては、異なる遺伝子供給源も含め24 種の抵抗性遺伝子(Pia,Pib, Pii, Pik-s, Pik, Pik-h,Pik-m, Pik-p , Pish, Pit, Pita(Pi4), Pita-2, Piz, Piz-5, Piz-t, Pi1, Pi-3, Pi5, Pi7(t), Pi9, Pi11(t), Pi12(t), Pi19, Pi20)を対象として31系統で構成される。
  2. インド型品種CO39 の同質遺伝子系統は、遺伝的背景にPia を有し、加えて15 種の抵抗性遺伝子(Pib,Pik-s, Pik, Pik-h, Pik-m, Pik-p, Pish, Pita (Pi4), Pita-2, Piz, Piz-5, Piz-t, Pi1, Pi5, Pi7(t))を一つずつ保有する21系統から構成される。

成果の活用面・留意点

  1. 両系統群は、世界で初めて開発された国際標準判別品種シリーズであり、いもち病菌の病原性解明および判別システムの構築、さらには抵抗性遺伝子源として利活用できる。モノジーニックラインについては、世界30以上の研究機関、大学へすでに配布・利用されている.また、CO39の同質遺伝子系統群は、次年度(2005年)より配布を始める。
  2. CO39の同質遺伝子系統群は、遺伝的背景にPia を含むので、いもち病菌に対する反応を観察する際には、Piaの効果も考慮する必要がある。
  3. モノジーニックラインと同質遺伝子系統群は、いずれも熱帯の短日条件下で田植え後短期間で出穂・登熟する。また、倒伏しやすいので、肥培管理に気をつけるとともに種子増殖の際には混種をおこさないよう十分注意する。
  4. 系統に対する問い合わせや配布依頼は、IRRI遺伝育種生化学研究部のIRRI - 日本共同研究プロジェクト・チームもしくはINGERに行う。

具体的データ

  1.  

    表1
Affiliation

国際農研 生物資源部

分類

研究

予算区分
拠出金(IRRI- 日本共同研究プロジェクト、第ⅢおよびⅣ期)
研究課題

稲の環境調和型品種による持続可能な生産技術の開発

研究期間

2003 年度(1994 ~ 2004 年度)

研究担当者

福田 善通 ( 国際稲研究所 )

荒木 悦子 ( 農研機構 近畿中国四国農業研究センター )

常松 浩史 ( 生物資源部 )

加藤 ( 宮崎県総合農業試験場 )

井辺 時雄 ( 農研機構 作物研究所 )

YANORIA Mary Jeanie Telebenco ( 国際稲研究所 )

Ebron Leodegario A. ( 国際稲研究所 )

KHUSH Gurdev G. ( 国際稲研究所 )

ほか
発表論文等

Tsunematsu, H., Mary Jeanie T. Yanoria, leodegario A. Ebron, Hayashi, N., Ando, I., Kato,H., Imbe, T. and Gurdev S. Khush (2000): Development of monogenic lines of rice for blast resistance. Breeding Science 50, 229-234.

福田善通, 荒木悦子, J. M. Yanoria, L. A. Ebron, D. Mercado-Escueta, 常松浩史, 加藤浩, 井辺時雄, G. S. Khush (2002): IRRI におけるイネいもち病判別品種と準同質遺伝子系統の開発. 育種学研究, 第4巻 別冊2号, 167.

Fukuta, Y., Yanoria, M. J. T, Mercado-Escueta D, Ebron L. A, Fujita, Y., Araki, E. and Khush G. S (2002): Quantitative traits loci (QTL) reactions to rice blast isolates from Japan and Philippines. Abstract 3rd IRBC.

日本語PDF

2003_08_A3_ja.pdf2.31 MB

English PDF

2003_08_A4_en.pdf52.1 KB

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