ミャンマーの在来イネ品種に由来する新規いもち病抵抗性遺伝子
ミャンマー由来の在来イネ品種Haoruのいもち病抵抗性には、3つの抵抗性遺伝子が関与する。このうち二つは、標準判別いもち病菌菌系に対する抵抗性反応が既知のものとは異なり新規のものであり、第12染色体の遺伝子名はPi58(t)、第6染色体のものはPi59(t)である。
背景・ねらい
イネのいもち病の防除には、抵抗性品種の利用が経済的また環境共生的にも有効である。このため、新規のいもち病抵抗性遺伝子をみつけ、育種に利用していくことは重要である。ミャンマーの在来イネ品種のHaoruは多くのいもち病菌菌系に抵抗性を示すので、その抵抗性の遺伝的機構を解明し、抵抗性遺伝子源としての可能性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ミャンマーの在来品種Haoruは、フィリピン産標準判別いもち病菌20菌系のうち、17菌系に対し抵抗性を示す。(表1)
- この17菌系を用いた、Haoruと感受性系統US-2との雑種後代集団(BC1F2系統群)の分離分析は、Haoruが少なくとも3種類の抵抗性遺伝子を持つことを示す(データ省略)。
- これらのうち、二つは第12染色体と第6染色体にそれぞれ座乗する。(図1、2)
- これら遺伝子をホモで持つ固定系統群(BC1F2)(表中に太字で表記)では、当該染色体に抵抗性遺伝子を持つ既報の判別品種(一遺伝子系統群)(表中の名称がIRBLで始まる品種)との反応が標準判別いもち病菌菌系に対して異なることから、これらの固定系統は新規抵抗性遺伝子を持つと言える(表1)。
- 遺伝子名は、第12染色体のものがPi58(t)、第6染色体のものがPi59(t)である。
成果の活用面・留意点
- 第12染色体のPi58(t)、第6染色体のPi59(t)は、同じ染色体領域に座乗する既存の抵抗性遺伝子とは異なるもののため、新たな遺伝子源として利用できる。
- 分析に用いたSSRマーカー情報は、マーカー補助選抜の情報として活用できる。
- 遺伝子座の同定が進んでいないもう一つの抵抗性遺伝子については、連鎖解析などさらなる解析が必要である。
- Haoruの種子は、国際稲研究所ジーンバンクから入手可能である。
具体的データ
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表1 判別品種およびHaoru由来抵抗性遺伝子保有系統(太字)の反応
R:抵抗性、M:部分抵抗性、S:感受性
BC1F2系統群における抵抗性遺伝子ホモ型のものの抵抗性反応 -
図1 第12染色体上の新規抵抗性遺伝子Pi58(t)の位置
A:日本晴ゲノム塩基配列に基づく物理地図上のDNAマーカーおよび既知の抵抗性遺伝子の位置。
B:連鎖地図 -
図2 第6染色体上の新規抵抗性遺伝子Pi59(t)の位置
A:日本晴ゲノム塩基配列に基づく物理地図上のDNAマーカーおよび既知の抵抗性遺伝子の位置
B:連鎖地図
- Affiliation
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国際農研 熱帯・島嶼研究拠点
国際農研 生物資源・利用領域
- 分類
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研究B
- 研究プロジェクト
- プログラム名
- 予算区分
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交付金 » イネ創生
拠出金 » IRRI-日本共同研究プロジェクト
- 研究期間
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2013年度(イネ創生:2011-2015年度、拠出金:1999-2012年度)
- 研究担当者
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小林 伸哉 ( 農研機構 次世代作物開発研究センター )
科研費研究者番号: 70252799小出 陽平 ( 日本学術振興会 )
科研費研究者番号: 70712008Telebanco-Yanoria Mary Jeanie ( 日本学術振興会 )
福田 善通 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
- ほか
- 発表論文等
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Koide, Y. et al. (2013) Molecular Breeding, 32: 241-252
- 日本語PDF
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2013_B06_A3_ja.pdf170.53 KB
2013_B06_A4_ja.pdf263.46 KB
- English PDF
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2013_B06_A3_en.pdf57.55 KB
2013_B06_A4_en.pdf78.64 KB
- ポスターPDF
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2013_B06_poster.pdf306.5 KB