研究成果情報
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国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。
年度ごとの国際農林水産業研究成果情報はこちら。
- 農家圃場レベルの降雨栽培暦を用いた年次・年内降雨変動の把握と農家の作付け選択の支援(2004)
農家圃場に気象観測装置を設置し、日降雨量と作付け選択を農家レベルと村落レベルの栽培暦に表示し、農家の播種と雨期の開始を把握することができる。西アフリカ・マリの年間雨量800mm 半乾燥地帯では10mm以上の降雨イベントが 7日間以内に2回ある前に播種すると苗立ちが悪くなり、再播種の必要性が高まる。年間雨量1200mm半湿潤地帯では農家は栽培暦を利用して播種を早めることができた。
- 農業社会化服務体系の整備における農民合作組織(2004)
農民合作組織(専業協会、新型合作社)の組織化は、農業産業化経営を補完するものとして取り組まれるようになったものであるが、農業社会化服務体系の中で経済的・技術的において中心的な役割を果たしつつあり、政府収入の乏しい地域で農業技術普及組織が変容する中で、従来の中国の農業の生産流通を大きく変える可能性を有している。
- 東北タイ・天水農業地域における水文立地解析モデルの開発(2004)
東北タイ・コンケン周辺地域を対象に、日雨量を入力データとして小流域の水文過程を再現するシミュレーションモデルを構築した。このモデルに米収量推定モデルを結合することによって、流域内における面的な米収量の推定が可能である。
- 乾燥誘導性のZinc-Finger型転写因子遺伝子を用いたストレス耐性植物の開発(2004)
環境ストレス時には特異的遺伝子の発現が押さえられる。遺伝子発現を押さえる働きを持つリプレッサーとして4種のZinc-Finger型転写因子の遺伝子を明らかにした。これらの遺伝子のうち乾燥や塩や低温によって誘導されるSTZ遺伝子の過剰発現体はストレス耐性を示し、ストレス時に遺伝子発現をおさえて植物に耐性を付与すると考えられた。
- イネいもち病抵抗性遺伝子「Pish」は第一染色体長腕に位置する(2004)
イネいもち病の抵抗性遺伝子Pishは、イネ第一染色体長腕上のSSR マーカーRM212とOSR3と間に、それぞれ7.9および15.2cMの距離をもって座乗する。
- インドネシア西ジャワ熱帯高原におけるキャベツ根こぶ病被害抑制のための好適輪作作物(2004)
インドネシア西ジャワのキャベツ根こぶ病激発圃場に8ヶ月間各種作物を導入した場合、レタス、ダイコン、ニンニクは休閑を上回る根こぶ病被害軽減効果を示し、ジャガイモおよびネギは休閑とほぼ同等である。一方、ニンジン、ラッカセイおよびインゲンマメ、トウガラシは休閑の効果を下回る。休閑でも、2作期間により大幅に被害軽減を出来るので、根こぶ病抑制のための自由度の高い短期輪作が構成出来る。
- 東北タイにおける臭素を用いた不飽和帯での土壌水の追跡(2004)
地表に散布した臭素を100mLコアと遠心分離器を用いて回収し、その濃度分布から土壌水を 追跡する方法を東北タイの試験地に適用し、土壌面蒸発量や降水の浸透量を解析した。
- 地表水のラドン濃度測定のための簡便な濃縮装置の開発と応用(2004)
途上国でも設置可能な濃縮装置により、地表水のラドン濃度を容易に測定することができ、地下水の湧出地点の特定などに応用できる。
- ケニア産オオタバコガに対する有用天敵2種の寄生特性(2004)
ケニアのオオタバコガHelicoverpa armigera幼虫に対して、捕食寄生性昆虫であるヤドリバエ2種(Drino zonata, Linnaemya longirostris)が天敵として有望であり、2種共存下で共倒れしないのでこの2種を併用する事が可能である。
- イネに共生する窒素固定エンドファイトの新規グループ(2004)
圃場で栽培したイネからnifH 遺伝子を培養を介さずに検出すると、既分離の窒素固定細菌のnifH 遺伝子との相同性が低い配列が多数見つかり、これらは独立した一つのクラスターを形成する。RT-PCRでこのクラスターの割合が高いことから、新規グループの窒素固定エンドファイトがイネでは重要な役割を担っていることが示唆される。
- メコンデルタにおける米ヌカ主体豚飼料へのサトウキビ・シロップ添加効果(2004)
米ヌカを主体とした飼料中にサトウキビ・シロップを4%添加することにより、豚の増体、飼料要求率が改善される。また、米ヌカを主体としながらサツマイモ茎葉を乾物当り10%配合した飼料中にサトウキビ・シロップを3%添加することにより、増体、飼料要求率及び粗タンパク質、粗脂肪等の消化率が改善される。
- めん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1fのアジアにおける地理的分布と日本への小麦伝播経路(2004)
良いめん物性に関与するグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1f のアジア地域における地理的分布から、日本への伝播経路は、中国からの直接伝播ルート(めんロード)と朝鮮半島経由の2つの伝播ルートが考えられた。
- シトロネラオイルによるコクゾウムシ及びカビの防除(2004)
熱帯のイネ科植物シトロネラグラス(Cymbopogon nardus)の精油に含まれるテルペン類はコクゾウムシ及びカビの発生を抑制し、穀物貯蔵に利用できる。
- 中国には強いアンジオテンシンⅠ変換酵素阻害活性を有する豆豉(トウチー、伝統的大豆発酵食品)がある(2004)
四川省の潼川豆豉(トンツァントウチー)は、糸引納豆の約10倍強いアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)阻害活性(血圧上昇抑制作用の指標)を有する。
- アグロフォレストリーにおける上木間伐と土壌環境の変化(2004)
無降雨期間中の土壌水分の減少速度は無間伐林より間伐林で緩やかになった。間伐処理は林床 に植栽された作物等の苗木により良い光環境を提供することは良く知られているが、植栽苗を取りまく 土壌水分環境をも好転させる。上木の間伐はアグロフォレストリーシステムでの作物等の導入にプラス に働くことが判明した。
- 短い乾期に特有な作物被害と水の葉面噴霧による被害軽減(2004)
乾期に低下した気孔開度は、乾期が終わって土壌水分が増えても直ぐには回復しない。この可逆的反応で光合成、吸水が低下し、作物の生育、収量が抑制される。夕刻の水の葉面噴霧で気孔開度を高め、被害軽減できる作物(トマト、パパイヤ、サツマイモ)がある。
- 出穂特性の異なる小麦8品種が持つVrnおよびPpd遺伝子(2004)
Vrn遺伝子について、小麦品種「フクワセコムギ」、「ゼンコウジコムギ」、「Schomburgk 」はそれぞれVrn-D1、Vrn-D1、Vrn-A1を持つ。Ppd遺伝子について、「ハルヒカリ」は主働遺伝子を持たず、「農林59号」、「農林67号」、「農林61号」、「ゼンコウジコムギ」、「埼玉27号」、「Schomburgk 」の6品種は1個の同じ主働遺伝子を持ち、「フクワセコムギ」は2個の主働遺伝子を持つ。
- 蛍光顔料粉末を用いたミカンキジラミの標識法(2004)
カンキツグリーニング病のベクターであるミカンキジラミは、蛍光顔料粉末を粉衣するダストマーキング法により標識できる。
- イネ雑種集団内の穂いもち圃場抵抗性弱個体を淘汰する世代促進技術(2004)
多肥栽培、スプリンクラーによる毎朝夕の散水、風除けの設置により、沖縄支所内の圃場で従来の世代促進栽培より穂いもちを安定して発病させることができ、雑種集団内の穂いもち圃場抵抗性弱個体を淘汰できる。
- 目的型踏査線調査法を用いてインドネシア西ジャワ州800m-1800m 標高地帯の作付け体系の多様性を把握(2003)
目的型踏査線調査法を用いて、稲作から温帯野菜への作付け移行と混作・単作の分布を標高毎に表示し、作付けの理由と制約を総合的に把握することができる。インドネシア西ジャワ州において、温帯野菜への移行は1100-1200mに認められ、混作は1100-1600mに集中する。単作栽培技術、および混作における作物間資源競合の緩和と経済効率に基づく栽培技術は農家の選択理由と一致する。