養液・電照栽培したパッションフルーツの秋実には、機能性成分が多く含まれる

要約

パッションフルーツの果実に含まれる主カロテノイドは、ζ-カロテンである。機能性成分とされるζ-カロテンとアスコルビン酸の含量は収穫時期の影響を受け、養液・電照栽培した秋実に多く含まれる。

背景・ねらい

パッションフルーツ「サマークイーン」(Passiflora edulis Sims× P. edulis Sims f. flavicarpa)は、南九州や沖縄で栽培されており、果実には独特の香りと酸味があり、カロテノイド(1100 μg/100 g;五訂食品成分表)を多く含むなど、他の果実には見られない特徴を持つ。慣行の土耕栽培では夏実(鹿児島において6~7月)と冬実(同12~1月)が収穫されるが、最適な施肥や地温管理が可能な養液栽培法と花芽誘導のための発光ダイオードを用いた低コストな電照栽培法を組み合わせた養液・電照栽培(図1)を行うことにより、慣行の土耕栽培では得られなかった秋実(10~11月)の収穫が可能となった。健康意識の高まった消費者にとって抗酸化作用を有する機能性成分であるカロテノイドやアスコルビン酸含量の高い果実は魅力的であり、消費拡大が期待されることから、これら機能性成分含量の季節変動を明らかにすることは重要である。そこで、養液・電照栽培されたパッションフルーツ果実中に含まれる機能性成分の含量を収穫期別に測定し評価する。

成果の内容・特徴

  1. パッションフルーツ「サマークイーン」の果汁中に含まれる主カロテノイドは、吸収スペクトル等から、ζ(ゼータ)-カロテンである(図2)。
  2. 果汁をSep-Pak C18簡易カラムで処理した後、アスコルビン酸の還元作用による試験紙の発色程度をもとに、濃度を測定するリフレクトクアントアスコルビン酸テストを試みることにより、簡易で迅速にアスコルビン酸含量を定量することができる。
  3. ζ-カロテンおよびアスコルビン酸の含量は収穫期の影響を受け、秋実(10月収穫)で一番多く、冬実(12、1月収穫)、夏実(8月収穫)の順に減少する(図3)。
  4. 果汁中に含まれるアスコルビン酸とζ-カロテンの含量の間には、正の相関が見られる(図4)。

成果の活用面・留意点

  1. 周年生産が可能な養液・電照栽培を行うことにより、機能性成分を多く含む秋実を収穫することができる。
  2. 簡易測定が可能なアスコルビン酸を指標に、ζ-カロテン高含有果実を選抜できる。
  3. 本研究に供試した果実は、鹿児島県果樹試験場(鹿児島県垂水市)で栽培されたものである。
  4. 養液・電照栽培では、波長660 nmの赤色発光ダイオードを用いた電照装置を10アール当たり666台(120個/台)設置し、液肥にはタンクミックスA:タンクミックスB(2:1)をEC値0.5 mS/cmで施用している。

具体的データ

  1.  

    T図1
  2.  

    図2
  3.  

    図3
  4.  

    図4
Affiliation

国際農研 沖縄支所

分類

研究

予算区分
その他受託[高度化事業]
研究課題

養液・電照栽培によるパッションフルーツの機能性成分変動評価

研究期間

2005年度(2003~2005年度)

研究担当者

加藤 秀憲 ( 沖縄支所 )

小川 一紀 ( 農研機構 果樹研究所 )

ほか
発表論文等

加藤秀憲・小川一紀・後藤 忍・深町 浩・米本仁巳 (2005): パッションフルーツの機能性成分変動評価.熱帯農業 49巻別号 2, 43-44.

日本語PDF

2005_seikajouhou_A4_ja_Part19.pdf600.3 KB

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