チーク材に含まれるカウチュークの耐久性への関与
チークの心材部の主として放射柔細胞に含まれるカウチューク(ゴム物質)はチーク材の高い耐久性の発現に関与している。カウチュークは材表面の撥水性向上だけでなく、キノン類を中心とした心材成分との相乗効果によりチーク材の耐久性を高めていると考えられる。
背景・ねらい
チーク(Tectona grandis)材は価値の高い熱帯有用樹種の代表であり、世界的に広く造林されている。しかし、その耐久性は品種や、地域により大きく変動する。高い耐久性発現の機構を明らかにすることにより、より優れた材質のチーク材を得るための育種や造林の指標を示すことが出来る。
成果の内容・特徴
- カウチュークは辺材から心材を貫く放射組織中に、四酸化オスミウムで黒褐色に染色される球形の油滴性物質として光学顕微鏡で観察される。それは、辺材外部には存在せず、辺材中央部から内部の放射柔細胞で形成され始め、辺心材境界で増大した(図1)。
- 心材成分をアセトン抽出しカウチュークを残すとチーク材の撥水性が向上した。すなわち、材表面と水との接触角が増大した(図2)。走査型電子顕微鏡観察ではカウチュークが木材表面をフィルム状に覆っていることがわかる(図3)。その後カウチュークをクロロホルムで抽出すると撥水性は著しく低下した(図2)。これらはX線光電子分光法によるC1(炭素は炭素又は水素と結合)の比率の変動からも確認できた(表1)。
- 未抽出のチーク材はカワラタケ(Coriolus versicolor)でJISA9201に従い12週間腐朽させると3.2%の質量減少率を示した。エタノールで心材成分を除いた材では14.2%、更にクロロホルムでカウチュークを除くと16.3%の重量減少率を示した。カウチュークの抗腐朽効果はわずかであるが、その高い撥水性(図2)と心材成分の抗菌性との相乗効果によりチークは高い耐久性を示すと考えられる。
成果の活用面・留意点
チーク造林木の耐久性は樹齢、地域等により変動が大きい。各国の造林木の心材成分量とカウチューク量を調べることにより品種間差、地域間差などの耐久性の事前評価の指標をつかむことが出来るであろう。得られた指標を育種や造林方法に生かすことが必要である。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 林業部
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マレーシア理科大学
- 分類
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行政
- 予算区分
- 経常
- 研究課題
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熱帯木材の現地保存方法の解明
- 研究期間
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平成7~10年
- 研究担当者
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山本 幸一 ( 林業部 )
SIMATUPANG Maruli H. ( マレーシア理科大学 )
SULAIMAN D. ( マレーシア理科大学 )
Hashim Rokiah ( マレーシア理科大学 )
- ほか
- 発表論文等
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Yamamoto, K., Simatupang, M.H. and Hashim, R. (1998) Caoutchouc in teak wood (Tectona grandis L. f. ), formation; location; influence on sunlight irradiation; hydrophobicity and decay resistance. Holz als Roh‐und Werkstoff, 56, 206-209.
Yamamoto, K. and Simatupang, M. (1997) Formation of caoutchouc in wound tissue of teak wood (Tectona grandis). 4th Conference on Forestry and Forest Products Research, 2‐4, oct, Kuala Lumpur, Malaysia.
- 日本語PDF
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1997_18_A3_ja.pdf1.04 MB