コブミカン(Citrus hystrix)の葉に含まれる抗変異原物質フラノクマリンの同定

要約

東南アジアで広く食用に利用されているコブミカン(Citrus hystrix)の葉は、複素環アミン類等の変異原物質に対して強い抗変異原性を示す。コブミカンの葉に含まれる主要な抗変異原物質は、epoxypeucedanin及びepoxybergamottinである。

背景・ねらい

抗変異原性を有する食品を適切に摂取することにより発ガンのリスクを低減できるとの考えから、抗変異原性は食品の重要な生理機能性の一つとして認識されている。機能性食品や医薬の原料等としての産業利用を通じて、開発途上地域の農産資源高付加価値化を図るため、東南アジアで利用されている数百種の在来食用植物の中から、抗変異原性の優れたものを見出し、その特性を明らかにする。コブミカンの葉は独特のさわやかな芳香を持ち、東南アジアで広く常食されており、タイなどでは全国的かつ恒常的に流通している。

成果の内容・特徴

  1. コブミカン葉(図1)のメタノール抽出物は、複素環アミンに対する強い抗変異原性(エームス試験法)を示す。植物体1 mg(新鮮重)から得られた抽出液が、Trp-P-1 (1 ng) により引き起こされる突然変異の90~100%を阻害する(寒天プレート1枚当たり)。季節、産地間の差はあまり大きくない。
  2. コブミカン葉の抗変異原性は100°C、10分間の加熱調理後も低下しない。
  3. コブミカンの葉に含まれる主要な抗変異原物質は、エポキシ化されたプレニル基が結合したフラノクマリンの2種の誘導体epoxypeucedanin及びepoxybergamottinである(図2、3)。両物質は、変異原物質を活性化させる肝臓の酵素(チトクロムP450)を阻害することにより抗変異原性を発揮する。特にepoxybergamottinは含量が高く、IC50値も低い(抗変異原性が高い)ことから、有望な成分である。

成果の活用面・留意点

  1. コブミカンの葉に含まれる抗変異原物質は水に溶けないので、葉自体を摂取できるように、細かく刻んだり、揚げたりするなど調理加工方法を工夫する必要がある。
  2. プレニル化フラノクマリン類が人体に吸収されることが他の研究により明らかとなっている。

具体的データ

  1.  

    図1
    図1 コブミカンの葉(左、中)とコブミカン葉を使った料理ホーモック(右、白身魚のココナツミルク蒸し)
  2.  

    図2
    図2 コブミカン葉エーテル抽出物のHPLCによる分画
    2つの主要抗変異原物質が高濃度に含まれていることがわかる。
  3.  

    図3
    図3 コブミカン葉の主要抗変異原成分
    IC50の値は、ラット肝S9画分の変異原活性化酵素 (チトクロムP450 ethoxyresorufin O-deethylase) に対する50%阻害濃度。
Affiliation

国際農研 利用加工領域

分類

研究B

予算区分
交付金〔高付加価値化〕
研究課題

アジア農産物の高付加価値化

研究期間

2009年度(2006~2010年度)

研究担当者

中原 和彦 ( 利用加工領域 )

吉田 ( 食品総合研究所 )

科研費研究者番号: 60353992

Trakoontivakorn Gassinee ( カセサート大学 )

Tangkanakul Plernchai ( カセサート大学 )

ほか
発表論文等

中原ら、日本農芸化学会2009年度大会(福岡)講演要旨集p.14

日本語PDF

2009_seikajouhou_A4_ja_Part11.pdf102.46 KB

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