イネの少分げつ性遺伝子の高精度連鎖解析

要約

イネ(Oryza sativa L.)品種合川1号の持つ低分げつ性に関わる遺伝子Ltnは、SSRマーカーssr6049-23ssr6049-2の間に位置しており、その候補領域は76.7kbpに絞られる。

背景・ねらい

イネ(Oryza sativa L.)の分げつ性は収量と密接に関わるため、遺伝的改良の対象となる重要な形質であるとともに、植物の形態形成を理解する上でも重要である。わが国では、収量性改善のため低分げつ品種合川1号が育成されている。この低分げつ性は、単一の優性遺伝子(Ltn)に支配されており、第8染色体長腕上に位置することが明らかにされている。国際稲研究所では収量性の改善を目的に少分げつ型の品種の開発が行われたが、合川1号ほど少ないものは育成されていない。本研究では、熱帯地域における直播栽培等で利用可能な低分げつ品種を育成すべく、インド型品種IR64の遺伝的背景に少分げつの導入をはかる共に、マーカー選抜育種に必要な基礎情報を得るために、高精度連鎖解析によりLtnの詳細な位置を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  1. BC5F2集団94個体の連鎖解析において、Ltnは第8染色体上のSSRマーカーssr5816-3A4765の間に位置しており、ssr5816-3A4765ssr5816-3LtnLtnA4765の距離はそれぞれ6.9cM、1.7cM、5.1cMである(図1)。なお、集団の交配組合せはIR64/合川1号//IR64*5である。
  2. BC5F3集団3550個体を用いた高精度連鎖解析において、Ltnの候補領域はSSRマーカーssr6049-23ssr6049-2の間に特定され、日本晴塩基配列上では76.7kbpに絞られる(図1)。

成果の活用面・留意点

  1. 少分げつ性遺伝子Ltnの近傍に座乗するSSRマーカーの情報は、少分げつ性のマーカー選抜に利用できる。
  2. 育成されたインド型品種IR64を遺伝的背景に少分げつ性を導入した系統は、研究材料として熱帯でも活用できる。

具体的データ

  1.  

    図1.イネ第8染色体長腕上の低分げつ性遺伝子Ltnの高精度連鎖地図.
    図1.イネ第8染色体長腕上の低分げつ性遺伝子Ltnの高精度連鎖地図.
    *中段括弧内の数値はLtnとマーカー間の組換え個体数
Affiliation

国際農研 生物資源領域

分類

研究

予算区分

拠出金 » IRRI-日本共同研究プロジェクト

予算区分
交付金〔節水栽培〕
研究課題

節水条件下における水稲栽培技術の開発

研究期間

2008年度(1999~2010年度)

研究担当者

小林 伸哉 ( 生物資源領域 )

藤田 大輔 ( 国際稲研究所 )

Ebron Leodegario A. ( 国際稲研究所 )

福田 善通 ( 生物資源領域 )

ほか
発表論文等

荒木悦子・Ebron, L.A.・Cuevas, R.P.・Mercado-Escueta, D.・Khush, G.S.・Sheehy, J.E.・加藤浩・福田善通 (2003) イネ品種合川1号の少分げつ性遺伝子の同定.育種学研究 5 (別1),95.

Fujita, D., Ebron, L.A., Araki, E., Fukuta, Y. and Kobayashi, N. (2007) Mapping of a gene for low tiller number, Ltn (t), in Japonica rice variety Aikawa 1. Proceedings of the 2nd International Conference on Rice for the Future, 448-452.

日本語PDF

2008_seikajouhou_A4_ja_Part12.pdf456.47 KB

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