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258. 世界水の日

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3月22日は、「世界水の日(World Water Day)」です。 1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミット(環境と開発に関する国際連合会議)で提案され、翌1993年に国連総会で定められた国際デーで、加盟国に対して、この日に各国で活動を企画するよう薦めています。

国際農研は国内外の研究機関とともに水資源の有効活用に関する研究を推進しており、プログラムA(資源・環境管理)では、土地条件に応じて、植生帯、保全農業、天水田稲作を配置する資源利用効率の高い土壌・水保全技術を提案・評価について、プログラムB(農産物安定生産)では、干ばつ、塩害、不良土壌等の環境ストレスに適応可能な高生産性作物の開発に取り組んでいます。

水資源の危機に対して、FAOも昨年出版した世界食料農業白書2020(The State of Food and Agriculture 2020)の中で、水と飲料水の確保や持続可能な利用について以下のメッセージを発信しています。

 
1.    32億人の人々が、水不足や水不足が深刻な農業地域で生活しており、そのうち12億人(世界人口の約6分の1)が、深刻な水不足の農業地域で生活しています。


2.    人口増加は、水不足の主な要因となっており、年間利用可能な淡水資源は、過去20年間で20%以上も減少しています。


3.    経済発展も水の需要増加の重要な推進要因の一つです。フードシステムレベルで持続可能を配慮した食生活によって水の消費量を減らすことができます。


4.    水をめぐる競争や気候変動は利害関係者間の緊張や対立をもたらしており、特に農村部の貧困層、女性、先住民を含む脆弱な人々の水へのアクセスにおける不平等を悪化させています。


5.    持続可能な開発目標(SDGs)のグローバル指標6.4.2(水ストレスレベル:淡水資源量に占める淡水採取量の割合)の最初の推計によると、天水農業における持続的な水不足と相まって依然として課題であることを示唆しています。水は、他のSDGs、特にSDG2(飢餓をゼロに)の達成に密接に関連しているため、希少な水資源を適切に管理は、達成するためにも重要です。


6.    世界の取水量の70%以上を占める農業において、淡水と雨水をより生産的かつ持続可能に利用することができなければ、SDGsは達成できません。


7.    農業において水利用の持続可能性を向上させるには、生態系を維持するために環境流量を確保することが必要です。このため、これを満たしていない地域は、取水量を減らし水利用効率を向上させる必要があります。


8.    めったに行われない水の会計と監査(water accounting and auditing)は、水不足とその対処への効果的な戦略の起点となるはずです。これらの実施を希望する人にとって、FAO のソースブック(http://www.fao.org/3/i5923e/i5923e.pdf)は役立ちます。


9.    天水農地は1 億 2,800 万ヘクタール(11%)が定期的な干ばつの影響を受けています。ある試算によると、節水の技術により生産量を最大24%、灌漑と合わせると40%以上も増加させることができるとしています。


10.    干ばつの影響を受けた6億5600万ヘクタール(14%)の放牧地では、様々な対策によって干ばつの影響を緩衝し水の生産性を向上させることができます。これらの対策の多くは、家畜の病気の予防や健康維持、給餌と飲用管理、乾燥地域の放牧圧を下げるための移動や生産の階層化など、間接的に水に関連しています。


11.    世界の灌漑農地で水ストレスが高い状態にある1 億 7100 万ヘクタール(62%)については、既存の灌漑インフラの回復及び近代化や革新的技術の採用など、水の生産性を向上させるインセンティブの実践を優先すべきである。また、サハラ以南のアフリカでは、2050 年までに灌漑面積が2倍以上に増加し、何百万人もの小規模農家が恩恵を受けると予想されています。


12.    水産養殖に見られるような水の利用や、水の再利用や淡水化などの非従来型の水源への投資は、水不足を補うためには重要な戦略です。ただし、イノベーションが経済的に効率的で、 社会的に受け入れられ、環境的に持続可能であり、状況に適したものでなければいけません。


13.    政策や規制は、例えば、資金調達、能力開発プログラム、環境流量設定の実施を通じて、技術やイノベーションの実装を促進する上で中心的な役割を果たします。しかし、必要な環境流量を確保しつつ、特に最も脆弱な人々のために、安全で公平かつ持続可能な水へのアクセスを可能にするためには、適切な水利権と安全な水保有権の適切な割り当てが必要です。


14.    効率的で持続可能かつ公平な水資源管理のためには、行政の規模やセクターを超えた政策の一貫性とガバナンスメカニズムが不可欠である。特に農業においては、天水・灌漑農地、家畜生産システム、内陸漁業、養殖、林業の各分野において、首尾一貫した包括的な戦略が必要です。

 

(参考)
World Water Day https://www.worldwaterday.org/
The State of Food and Agriculture 2020 http://www.fao.org/documents/card/en/c/cb1447en
World Water Council – Celebration of World Water Day, DD- 365  March – 22-23, 2021 https://www.worldwaterforum.org/en 


*概要に関する本翻訳は、FAOから公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にあります。

(文責:研究戦略室 金森 紀仁)

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