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255. 地球温暖化によって四季の長さが変わる

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日本

 

2021年3月14日、東京では、観測史上最速を記録した昨年と同じ日に、桜の開花が宣言されました。桜の開花に関係してくるのは冬の寒さと春の暖かさとされており、2021年は、昨年末から今年1月上旬にかけて記録的な大雪をもたらした強い寒気の影響で、全国的に桜のつぼみの休眠打破が早期に行われたとみられています。 

日本人にとり植物の変化は四季を感じるバロメーターですが、気候変動は四季にどのような影響を及ぼすのでしょうか。Geophysical Research Letters誌で公表された論文によると、1950年代には、北半球において毎年予測可能な範囲で四季が巡ってきました。しかし気候変動は季節の長さと開始日を大幅に狂わせるようになっています。論文は、気候変動対策が十分なされない場合、2100年までに北半球において夏が極端に長くなる一方冬が短くなる状態になりかねず、農業、人々の健康、環境に大きな影響を及ぼしうると警鐘を鳴らしました。

論文の著者らは、1952年から」2011年までの北半球における四季の長さと開始日の変化に関するデータを用い、気候モデルに基づいて将来四季がどのようにシフトするかについて分析しました。分析の結果、1952年から2011年の間、夏は78日から95日へ長くなったのに対し、冬は76日から73日に縮小しました。春と秋は、それぞれ124日から115日、87日から82日と短くなりました。この結果、春と夏は早めに始まり、秋と冬は遅く始まるようになっています。とくに地中海地域とチベット平原は大きな四季サイクルの変動を経験しました。著者らは、気候変動緩和努力なく、これらのトレンドが続けば、2100年までに冬は2か月に縮小、春や秋も短くなる一方で、夏が大幅に長くなると予測しました。

これらの影響は、気温変化に敏感な動植物に影響を与えます。生物活動周期の変化は生態学的条件を破綻させることで、動物と食料源の間のミスマッチをもたらしかねません。とりわけ農業への影響は大きく、季節外れの暖かい日や降雪は作物の発芽にダメージを与えます。また季節の変化は、アレルギー花粉にさらされる期間の延長や病気を媒介する蚊の北上など、人間の健康にとっても問題をもたらします。さらに季節のシフトは、熱波や山火事、また最近テキサスで観察されたような寒波などの極端な気象事象をもたらしかねないと懸念されています。

農業に関しては、季節変化に対するレジリエンスを強化する必要があります。国際農研では、季節の変化に合わせて生長しているイネを栽培するための基礎知識として、品種の早生や晩生を決定する花芽形成の時期・季節、イネの花が開花し受精が行われる時間、それらの「時」を決める仕組みなどについて研究しています。これらの知識は、夏の猛暑による不稔を回避するため、イネの開花時間を早める品種改良に貢献しています。


参考文献

Jiamin Wang et al, Changing Lengths of the Four Seasons by Global Warming, Geophysical Research Letters (2021). DOI: 10.1029/2020GL091753

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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