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248. 食品廃棄指標報告2021:食品廃棄は年間で40トントラック2300万台分

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持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット12.3では、世界全体で2030年までに小売や消費者レベルでの一人当たりの食品廃棄(food waste)を半減させ、生産やサプライチェーンで生じる食品損失(food loss)を減少させることを目標としています。国連食糧農業機関(FAO)が2019年世界食料・農業白書において、食品ロス(小売に到達する前段階までのロスを含む)と廃棄(小売・消費段階でのロス)を明確に定義し、食品ロス指標(Food Loss Index-FLI)と廃棄食品指標(Food Waste Index-FWI)を提起、FLIについては、初めて、14%という推計値を公表していました。  FWIについては、国連環境計画(UNEP)は今月、報告書「食品廃棄指標報告2021(Food Waste Index Report 2021)」を発表しました。報告書は、包括的な食品廃棄データの収集、分析、モデリングを通し、各国が正確に損失を測定する方法を示しています。

報告書によると、2019年に販売された9億3000万トン以上の食品がゴミ箱に捨てられました。家庭、レストラン、店で、消費者が利用できたであろう食品の17%(40トントラック約2300万台分、日本で一般に使用される10トントラック換算では約9300万台分)がただただ捨てられたのです。その他に生産・加工・流通過程で失われた食品もあわせ、全体として食品の3分の1は消費されることなく失われました。

食品廃棄は主に豊かな国の問題かと考えられていましたが、貧しい国のデータは不足しているとはいえ、すべての国で廃棄レベルが驚くほど類似していると報告書は述べています。家庭は食品の11%を廃棄し、外食産業と小売店はそれぞれ5%、2%を廃棄しています。このことは環境、社会、経済に大きな影響を及ぼしており、世界の温室効果ガス排出量の8〜10パーセントが消費されなかった食品に関連していると指摘しています。

食品廃棄を減らすことで、温室効果ガスの排出を削減し、土地の転用と汚染による自然破壊を遅らせ、食料の入手可能性を高め、飢餓を減らし、この世界的不況の時に費用を節約できるのです。本報告書は消費者に、家庭で食品を無駄にしないよう促しています。 また、食料廃棄を各国が気候変動に関するパリ協定でコミットする「国が決定する貢献(NDC)」に含めることを後押ししています。

国際農研は、ちょうど1年前の3月8日に、このPick Up企画をはじめました。 この頃コロナ禍の拡散スピードが加速し、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長がツイッターで、新型コロナウイルスの感染症例を報告した国の数は8日時点で100カ国に上ったと発表したと伝えられました。米ニューヨーク州で非常事態が宣言されたほか、イタリアでは北部地域を封鎖する政府計画も明らかになるなど感染問題の深刻化が懸念されました。 こうした事態を背景に、株安や原油価格の急落が進み、また、マスクやトイレットペーパーの買占めなどの社会問題が起こりました。さらには、移動規制やロックダウンの発出により、サプライチェーンの分断が起きると、食料ロス・廃棄の問題も生じ、フードシステムのショックに対する強靭化の必要性への認識も高まりました。 今後も、Pick Upは地球規模の食に関する最新の議論を紹介していきます。


参考文献

UN News (2021) Wasting food just feeds climate change, new UN environment report warns. 
https://news.un.org/en/story/2021/03/1086402  Accessed on March 5, 2021
United Nations Environment Programme (2021) Food Waste Index Report 2021. Nairobi.
https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/35280/FoodWaste.p…

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)

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