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989. 食料廃棄物問題の深刻さ

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989. 食料廃棄物問題の深刻さ

 

環境の視点から、食品損失(food loss:小売に到達する前の段階で失われた食品)と食品廃棄物(food waste:小売や消費者が廃棄した食品)を削減していくことが必要です。とくに、消費者に届ける場所と消費者自身による廃棄を含む食品廃棄物は、一般の消費者にとっても身近な問題であり、アクションを起こす必要があります。

国連環境計画(UNEP)によると、2022年時点で世界の7.83億人が飢え、世界人口の3分の1が栄養ある食へのアクセスに問題を抱えている一方で、毎日10億食分相当の食料が廃棄されています。食料廃棄物は、経済的な損失にとどまらず、気候変動・生物多様性喪失・環境汚染を悪化させており、削減に向けた早急の対策が求められます。

2022年、10.5億トンの食料廃棄物が推計されました。これは、一人当たり年間79キロ相当、あるいは消費者に提供されるべき食の5分の1相当が廃棄されていることを意味します。2022年に廃棄された食のうち、60%が家計部門、28%が外食サービス部門、12%が小売部門からと報告されました。最新データによると、食料ロスと食料廃棄物で温室効果ガス排出の8-10%の原因になっていると推計され、これは航空部門の排出の5倍に相当するそうです。また、世界の農地由来の食が無駄にされていることから、生物多様性喪失にも責任があります。食料システム・食料廃棄物の世界経済への影響は、1兆ドル相当と見積もられています。

問題は高所得国にとどまらず、高所得国・高位中所得国と低位中所得国の間で、世帯当たり平均食料廃棄物は一人当たり年間7㎏程度の差しかないと報告されました。平均気温の熱い国ほど、家計部門の一人当たり食料廃棄物が多い傾向にあり、非可食部の多い生鮮食品の消費の高さとコールドチェーンが整備されていないことが原因と考えられます。
都市部は食料廃棄削減・循環経済を推進することで大きなインパクトが期待されます。農村では食料廃棄は一般に少なく、その理由として余った食料をペットや家畜のえさ、あるいは自家製堆肥としてリサイクルしている可能性が指摘されます。

食料廃棄を削減していくために、各国は信頼しうるベースラインと定期的な調査を実施する必要があります。実際、日本やイギリスでは、政策・パートナーシップを通じ、それぞれ31%・18%という大幅な食料廃棄削減を実現したと伝えられています。

UNEPは、食料廃棄物の削減に向けた解決策の実施が重要であるとし、官民連携やベストプラクティスの教訓についての共有、長期的で包括的な変化のためのイノベーション推進を訴えました。

 

(参考文献)UNEP (2024) Food Waste Index Report 2024  https://www.unep.org/resources/publication/food-waste-index-report-2024

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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