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120. The Conversation. 深刻化するアフリカの食料安全保障問題 ― なぜ解決には信頼できるデータが必要か

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2020年8月27日、オンライン・フォーラムであるThe Conversationにて、ヨハネスブルグ大学教授らが、「深刻化するアフリカの食料安全保障問題 ― なぜ解決には信頼できるデータが必要か. Africa has a growing food security problem: why it can’t be fixed without proper data」 との論考を発表しました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックと封じ込め措置は生産者・消費者双方に負の影響をもたらしています。食料生産は寸断され、所得機会は失われました。中でもパンデミックによる最大の社会的影響は食料アクセスへの制限です。多くの国々、とりわけ輸入食料への依存の高いアフリカ諸国にとって、食料安全保障の危機への対応が優先政策事項になります。

パンデミックが拡大する中、地域・国レベルで農業に依存している南部・東アフリカ諸国において、食料安全保障の危機回避はフードサプライチェーンが機能することが不可欠です。地域経済の統合は食料安全保障危機を解決する重要な手段ですが、それには生産・インフラ等投資への支持なくして不可能です。さらに、食料市場に関する正確でタイムリーな情報が必要となります。食料価格等に関するデータは、政治経済安定性にとっても必要なものですが、十分整備されているとはいえません。

国際的には農業価格についてのデータ集計のための努力が不断に行われてきました。アフリカにおいても、一部の国では国レベルの商品取引所が開設され、卸売取引や市場・価格情報の収集に主導的な役割を果たそうとしています。しかし、南部・東アフリカ諸国では、商品取引市場はまだ効率的に機能しておらず、例外を除き、小規模生産者が信頼足り得る価格情報へアクセスできるような状況は整っていません。生産者がアクセス可能なデータが整備されていない状況では、地域レベルでの大きな価格差の存在を許します。これら価格差は合理的な輸送費等のコストを上回り、大規模な買い手が個々に高い輸送費に直面する生産者を搾取する状況をもたらします。

生産や市場構造に関連する情報に加え、食料価格に対するアップデートされた情報は、地域の農業食料システムの運営に欠かせません。パンデミックの影響把握から気候やバッタ被害の推計においても、情報は重要な役割を果たします。リアルタイムのデータなくして、適切な対応策を講じるのは不可能です。

パンデミックは、グローバル農業システムへの過度な依存が脆弱であることを示しました。より統合された地域農業システムの確立には、小・中規模農民を対象に含むアグリビジネス支援のための政策協調が必要です。中長期的に強靭で統合された地域農業システムを確立する上で、市場参加者・食料生産・価格に関する正確でタイムリーな情報へのアクセスが必要となります。

 

参考文献

The Conversation. Africa has a growing food security problem: why it can’t be fixed without proper data.  August 27, 2020 Simon Roberts, Jason Bell  https://theconversation.com/africa-has-a-growing-food-security-problem-…

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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