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1086. 食品ロスと廃棄

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1086. 食品ロスと廃棄

 

食品ロスは、食品のサプライチェーンに沿って発生しますが、食品廃棄物は小売業者や消費者が捨てるものを指します。食品ロスと廃棄(food loss and waste)の問題は解決しないだけでなく、悪化しています。食品ロスと廃棄を抑制することは、天然資源枯渇、気候変動、食料安全保障リスク、など、今日私たちが直面している食料システム危機を解決するだけでなく、将来の食料生産に伴う追加的な環境負荷を回避することに繋がります。

Nature Food誌は、食料システムにおけるロス・廃棄の問題の根本的な要因・インパクト・解決策に関する議論を紹介しています。

世界人口の29%が中程度または重度の食料不安に陥っている世界において、食品ロスと廃棄が総食料生産の約3分の1(13億トン)に達しているという事実を受け入れることは困難です。2022年には、生産された全食品の13%が失われ、さらに消費者が利用できる食品の19%が小売・外食産業・世帯部門で無駄になりました。食品ロスと廃棄の割合が最も高かったのは果物と野菜(45%)で、次いで魚介類(35%)、穀物(30%)、乳製品(20%)、肉と鶏肉(20%)の順となっています。

アジェンダ2030の実施の中間点を過ぎましたが、持続可能な開発目標12、ターゲット12.3(小売および消費者レベルでの世界の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後の損失を含む生産および供給チェーンにおける食品ロスを削減すること)の達成は、まだ難しい状況です。食品ロスは発展途上国で大きく、収穫・保管・輸送の制限により、食品サプライチェーンの初期段階で発生する傾向があります。食品廃棄物に関しては、家庭からの食品廃棄物について、一人当たりの年平均の廃棄量は過去数年来、高所得国、高中所得国、低中所得国の間でわずかに7㎏しか違わなくなってきており、こうした問題が、国の所得レベルにかかわらず生じていることがわかります。

食品ロスと廃棄の解決を妨げているのは、データの問題です。食品ロスのデータは、農場が分散していることに加え、報告や監視ツールに課題のある貧しい国において収集が特に困難です。「食用」作物と「非食用」作物の定義の違い、または非食用に転用できる作物の違いは、さらなる課題をつきつけます。同様の問題は食品廃棄物でも起こります。食品廃棄物指数を担当する国連環境計画(UNEP)によると、2030年持続可能な開発目標(SDGs)の進捗状況を追跡するための推計値を有する国はほとんどなく、介入の有効性を評価する上での障壁となっています。

資源利用効率を高め、食品ロスと廃棄を回避する技術開発には、さらなる投資が必要です。食品のアップサイクル(今あるものを利用して別の用途のものに作り替え、付加価値を与えること)や新素材への加工、食品廃棄物対策アプリなど、創造的なソリューションがパラダイムシフトを促進する可能性があります。より深刻な問題は、食品廃棄物があっても利益が出るという食品市場の在り方や、社会的および環境的コストを反映しない食品価格が、非効率性・不平等を助長するということです。

生産者・消費者・企業・政府が協力して行動しない限り、抜本的な解決は困難です。2022年の世界の食品廃棄物の約60%は世帯部門由来であり、次いで外食産業・小売業となっています。国およびサプライチェーン間の国際協力とともに、個人レベルとシステムレベルの両方で対処する必要があります。解決策を設計する際には、所得グループ間や同じ国内の都市部と農村部の間の格差とともに、重要な地域差の存在も配慮する必要があります。

 

(参考文献)
Food loss and waste. Nat Food 5, 639 (2024). https://doi.org/10.1038/s43016-024-01041-7

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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