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244.新型コロナの食への影響と提言:Nature Foodより

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情報収集分析

 

2月18日に掲載されたNature Food誌の論説では、新型コロナウイルス・パンデミックが食や栄養に与えた影響について述べられています。2019年には、6億9千万人が栄養不足、20億人が食料不足で、30億人が健康的な食事をする余裕がありませんでした。 5歳未満の子ども1億4400万人が発育阻害、4700万人が消耗症、3800万人が過体重で、少なくとも3億4000万人が微量栄養素欠乏に苦しんでいました。新型コロナウイルスの影響で、適切な対応がなされない場合には、2022年までに、低中所得国でさらに930万人の子供が消耗症に、260万人が発育阻害になり、16万8千人が死亡し、8千300万~1億3200万人が栄養不良、8,800万~1億1500万人が極度の貧困に陥る可能性があります。 

新型コロナウイルスは、経済的および社会的システムのショック、フードシステムの混乱、および不可欠な健康と栄養サービスの適用範囲など、さまざまな角度から、食料・栄養安全保障に影響を及ぼしてきました。これらの影響は脆弱な層、特に低中所得国、女性、幼児、青年、高齢者、移民、避難民などに対して不均衡に大きなものになっています。また主食と比べて、野菜などの栄養価の高い食品が、バリューチェーンの不備などによってより大きな影響を受けています。

本コメントでは、2つの具体的かつ緊急の推奨事項として、政策対応と社会的保護プログラムを通じた対処を提案しています。1)フードシステムを、より効果的で、包括的で、強靭で、栄養価の高いものにするために、政府投資や政策でサポートしていくこと。2)脆弱層に有効な食料援助や学校給食プログラムなどの社会的保護プログラムを、特に栄養価の高い食品の消費を促す方向で運用していくこと。

新型コロナウイルスのパンデミックはフードシステム内の脆弱性を露呈し、国際的な目標と、目標に向けて一致団結するための全体的なシステムアプローチの必要性を強調しました。 2021年の国連フードシステムサミットは、長期的なプラネタリーヘルス(人間と地球の健康を両立する)変革を考案し、強靭なコミュニティを構築し、農村で農業に従事する人々を守り、持続可能なサプライチェーンと食品の安全性を促進するフードシステムを再考する機会となります。

国際農研は、国際農林水産業研究の戦略的動向に関する情報収集提供を重要なミッションの一つとしていますが、このPick Upでも新型コロナウイルスのパンデミックとフードシステムの関係に関する様々な議論について紹介していきます。


参考文献

Carducci, B., Keats, E.C., Ruel, M. et al. Food systems, diets and nutrition in the wake of COVID-19. Nat Food 2, 68–70 (2021). https://doi.org/10.1038/s43016-021-00233-9

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)
 

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