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95. 世界経済フォーラム: 自然へのリスク増大 (Nature Risk Rising)

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2020年1月に世界経済フォーラムが公表した「自然へのリスク増大 Nature Risk Rising」報告書を紹介します。

世界経済フォーラムの2020年グローバル・リスク報告書において、生物多様性喪失とエコシステム崩壊は次の10年間に人類が直面しうる5つの危機の一つに挙げられていました。人為的活動により100万の生物種が絶滅の危機に直面するなど、自然は今までかつてないペースで減少しています。現在の生産・消費パターン、土地利用と都市化、人口動態、貿易、産業、ガバナンスモデルがこの喪失の背景にあります。例えば世界的な資源搾取は、1970年の270憶トンから920憶トンに3倍に増加しました。生物多様性の喪失は警戒レベルにあります。

「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)」による報告書によると、過去50年、土地利用変化を含む5つの要因が90%の自然喪失に寄与しています。全てのビジネスは自然資本とエコシステムサービスに直接・間接的に依存しています。試算によると世界の総GDPの半分以上の44兆ドル相当の経済価値の創出が自然とそのサービスに依存しており、自然のロスからのリスクにさらされています。163経済セクターの自然資本依存度を推計した結果、世界GDPの15%(13兆ドル)が自然に大きく依存、37%(31兆ドル)が相当程度依存しています。自然に過度に依存する建設(4兆ドル)、農業(2.5兆ドル)、食品・飲料品(1.4兆ドル)三部門で8兆ドルの価値に相当、ドイツ経済の2倍にあたります。これらセクターは、健全な土壌、水、受粉、安定的な気候を森林・海洋の提供するエコシステムサービスに依存しています。これらサービスの損失に繋がる自然の喪失によって、経済セクターは深刻なダメージを受けます。 

例えば、コーヒー品種の60%が、気候変動・病害・森林破壊による絶滅の危機に直面しており、そのことによって、2018年に830憶ドルの小売価値があった世界コーヒー市場は不安定化し、多くの小規模農民が打撃を受けるでしょう。同様に、病害虫により、遺伝資源の多様性が低い重要な商業作物の生存を脅かします。世界の食料の半分以上は、たった3つの主食作物―コメ、小麦、メイズ、であり、既に外来種により960億ドル相当の16%ほどの年間収量を失っています。農業作物の多様化は病害虫への強靭性を向上し、気候変動への強靭性を高めるでしょう。しかし、経済インセンティブのもとで、モノカルチャーが未だに商業農業の支配的な形態です。

 

参考文献

World Economic Forum. New Nature Economy Report Series July 14, 2020. https://www.weforum.org/reports/new-nature-economy-report-series

World Economic Forum. Nature Risk Rising: Why the Crisis Engulfing Nature Matters for Business and the Economy https://www.weforum.org/reports/nature-risk-rising-why-the-crisis-engul…

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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