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1505. 地政学リスク高まる世界経済、途上国の食料・エネルギー負担増大
1505. 地政学リスク高まる世界経済、途上国の食料・エネルギー負担増大
国連貿易開発会議(UNCTAD)が公表した『Trade and Development Foresights 2026』によれば、世界経済は2025年から2026年初頭にかけて、AI関連需要や開発途上地域の産業生産拡大に支えられ、比較的堅調に推移していたとされています。一方で、同報告書は、2026年2月末以降の中東地域における軍事的緊張の急速な高まりにより、世界経済の見通しが大きく悪化したと指摘しています。
UNCTADは、世界の石油・天然ガス輸送の要衝であるホルムズ海峡周辺の緊張が、エネルギー市場に与える影響の大きさを強調しています。報告書によれば、軍事衝突の激化後、原油価格は60%以上上昇し、天然ガス価格は2倍超へ急騰したとされています。また、海上輸送コストや保険料の上昇により、エネルギーおよび物流コスト全体が押し上げられていると報告されています。
同報告書は、とりわけ開発途上地域への影響に強い懸念を示しています。多くの国・地域では、燃料のみならず、食料や肥料についても輸入依存度が高い状況にあります。このため、エネルギー価格の上昇は輸送コストや農業生産コストの増加を通じて食料価格へ波及し、インフレ圧力を一段と強める可能性があると警告しています。
さらにUNCTADは、バングラデシュ、エジプト、パキスタン、フィリピン、スリランカ、ベトナムなどにおいて、燃料価格高騰への対応として価格抑制策や供給管理措置が導入されていると報告しています。これらの国では通貨安や国債利回り上昇も進行しており、外貨建て債務負担の増加など、金融面での脆弱性が高まっていると指摘しています。
また、世界貿易の動向についても減速が見込まれています。2026年の実質商品貿易成長率は、2025年の4.7%から1.5~2.5%へ低下する見通しであるとされています。特に海上輸送の混乱は、エネルギーにとどまらず、穀物、肥料、工業製品など広範な国際サプライチェーンに影響を及ぼす可能性があると指摘されています。
一方で、AI関連分野は引き続き世界貿易を支える重要な要因となっています。半導体、サーバー、高性能計算機器などの需要は拡大を続けており、中国、北米、欧州、東アジアを中心に輸出入が増加していると報告されています。
さらにUNCTADは、今回の危機が再生可能エネルギー投資の重要性を改めて浮き彫りにしたと指摘しています。エネルギー安全保障の観点から、化石燃料依存を低減し、再生可能エネルギーや蓄電池、半導体などの重要技術への投資を加速する必要があるとしています。しかし、クリーンエネルギー投資には依然として大きな地域的偏在があり、世界有数の太陽光資源を有するアフリカへの投資は、世界全体のわずか2%にとどまっていると報告されています。
以上の分析は、地政学リスクがエネルギー市場にとどまらず、食料安全保障、金融の安定性、さらには開発途上地域の経済に連鎖的な影響を及ぼし得ることを示しています。本報告はまた、経済安全保障と気候変動対策が一層密接に結びつき、エネルギー・食料・金融を一体として捉えたリスク管理の重要性が高まっていることを示唆しています。
(参考)
UNCTAD, Trade and Development Foresights 2026: Global economy faces a geopolitical challenge - An update to the Trade and Development Report 2025 (UNCTAD/GDS/2026/1) 13 May 2026
https://unctad.org/news/global-economy-faces-new-test-trade-food-and-fi…
(文責:戦略統括室 飯山みゆき)