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1503. 世界の水田由来温室効果ガス排出、過去60年で倍増
1503. 世界の水田由来温室効果ガス排出、過去60年で倍増
水田は世界の食料安全保障を支える重要な農業基盤である一方、農業分野における主要な温室効果ガス排出源の一つとされています。特に、水田から発生するメタン(CH4)は強力な温暖化効果を持ち、農業由来メタン排出の一定割合を占めるとされています。一方で、水田土壌には炭素貯留(SOC)による吸収機能もあるため、水田の気候影響を適切に評価するには、CH4や一酸化二窒素(N2O)に加え、土壌炭素変化を含めた統合的な評価が必要とされています。
Zhangらが『Nature Food』に発表した研究(2026年)では、データ駆動型モデル、プロセスベース生態系モデル(DLEM)、および1,255地点・21,334サイト年に及ぶメタ解析を組み合わせ、1961~2020年における全球の水田由来温室効果ガス収支が解析されました。同研究によれば、2011~2020年の全球水田からの排出量は年間1,090 ± 350 TgCO2換算に達し、1961~1980年平均と比較して約90%増加したと報告されています。
同研究は、排出増加の最大要因として水田面積の拡大を挙げており、全増加量の約58%を占めるとしています。特に東南アジア、南アジア、アフリカにおける水田拡大が、メタン排出の増加に大きく寄与したとされています。また、近年では稲わらの圃場還元の増加も重要な要因とされ、2000年以降の排出増加の約18%に寄与したと推定されています。さらに、過剰な稲わら投入は土壌炭素吸収を飽和させる一方で、メタン生成を促進する可能性があることも指摘されています。
地域別の分析では、アジアが全球排出量の約9割を占める一方、中国東北部や東南アジアでは土壌炭素吸収源の弱体化が進行していることが示されています。また、アフリカでは水田面積の急速な拡大に伴い、新たなメタン排出の増加地域となりつつあると報告されています。
さらに同研究では、間断灌漑(alternate wetting and drying)や過剰な作物残渣投入の抑制、適切な施肥管理などの対策により、収量を維持しつつ将来的な排出量を約10%削減できる可能性が示されています。一方で、将来の温暖化の進行により排出を完全に抑制することは難しく、地域条件に応じた統合的な管理戦略が必要であると結論づけられています。
以上のように、本研究は、水田由来の温室効果ガス排出が、メタン排出だけでなく土壌炭素吸収の変化を含む複合的な問題であることを示しています。これらの知見は、食料生産と気候変動対策の両立に向けて、地域特性に応じた気候スマート農業の導入が重要であることを示唆するものです。
(参考文献)
Zhang, J., Tian, H., Liang, XZ. et al. Global rice paddy greenhouse gas emissions have doubled over the past six decades driven by area expansion and intensified residue incorporation. Nat Food (2026). https://doi.org/10.1038/s43016-026-01355-8
(文責:戦略統括室 飯山みゆき)