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1431. 研究者を誰が育てるか(寳川通信11)

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1431. 研究者を誰が育てるか(寳川通信11)

 

研究者は、研究成果の公表や他研究者の研究動向を知るために学会に赴きます。筆者も年に数回の国内学会、数年に1回の国際学会に参加し、毎度刺激を受けて研究生活に還元しています。一方で、自分自身が学会の場でどのような役割を果たせているのかについては、これまであまり深く考えてきませんでした。学会の中で若手とされる年齢を過ぎつつある今、あらためて学会の役割と、その中で国立研究機関に所属する研究者が果たしうる役割について考えてみました。

まず、学会の持つ役割について整理してみます。学会は、17世紀ごろの西欧で研究成果の交換の場として誕生し、日本には明治時代の近代化に伴い導入されました。研究成果の発表、共有を主目的とし、そのための発信の場として講演会を開催し、学術雑誌を刊行します。それらを通し、研究者間のネットワークの形成(横の繋がり)、次世代の人材育成(縦の繋がり)、社会に向けた提言などの情報発信(外部との繋がり)に貢献することが求められています。このように多面的な役割を担うことで、学術分野が持続的に発展できるのだと思います。

国立研究機関やそこで働く研究者の役割についてはどうでしょうか。学会は会員により構成され、基本的には学会の持つ役割の担い手は会員です。当然、会員は大学教員や公立機関の研究員で区別されることはないため、少なくとも学会の枠内では公立機関の研究員も人材育成に貢献することが期待されていると感じます。そして、人材難や教育環境の変化もあり、人材育成にかかる研究機関の役割は学会の枠を超えて大きくなっていると感じています。文科省や科学技術振興機構も、大学以外の研究機関を人材の受け皿にとどまらず、人材育成の場として位置づけ、積極的な関与を促す動きがみられます。

国立研究機関の国際農研でも、国内外の研究人材育成が使命のひとつとなっています。国際農研では博士号所得後の若手育成型研究員を積極的に採用するとともに、JIRCASフェローや講習生制度、出前授業を始め、将来的に国際農業研究において活躍が期待される国内外の人材育成にも努めています。筆者はこれまでにアウトリーチ活動として、高校や大学にて講義を行う他、講習生を受け入れ研究指導に携わってきました。人材育成は実験や論文とは異なり、ゴールがすぐ先に見えないため、とても大変です。一方で、学生の個性に合わせた指導や研究は魅力的でもあります。学生の成長を肌で感じるだけでなく、新しいイノベーションの芽を育んだり、自身の研究を見つめ直し発展させる機会にもなります。育成対象の候補となる人材は減っており、分野によっては後継者不足の解消が喫緊の課題です。小中高等教育から研究を知る機会を増やす草の根活動も重要ですが、国立研究機関としては大学院生の教育に貢献することが短期的な目標となりそうです。今後は大学で育ってきた人材を受け入れることを主とする「待ちの姿勢」だけでなく、教育機関と積極的に連携しながら人材育成に直接関わる「攻めの姿勢」をより強めていくことが、社会的にも求められているのかもしれないと感じています。マイナー作物のサトウキビを研究対象とする筆者もそのような危機感を持って、学会も活用しながら、研究開発、情報発信、人材育成にも一層貢献していきたいと考えています。

 

参考:科学技術振興機構『研究開発の俯瞰報告書  日本の科学技術・イノベーション政策の動向(2023年)』
科学技術・学術審議会人材委員会『今後の科学技術人材政策の方向性(中間まとめ)(令和7年)』

(文責:熱帯・島嶼研究拠点 寳川拓生)
 

 

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