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1422. グリーンイノベーションは、農業食料システムからの温室効果ガス排出量を削減するための最良の政策選択肢である

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1422. グリーンイノベーションは、農業食料システムからの温室効果ガス排出量を削減するための最良の政策選択肢である

 

農業食料セクターからの温室効果ガス(GHG)排出量は、世界の温室効果ガス純排出量の約3分の1を占めており、これらの排出量を大幅に削減しなければ、地球温暖化を1.5℃未満に抑えることはできません。他のすべての排出源が消滅したとしても、現在の食料生産方法は、今世紀末までに約1℃の温暖化を引き起こす可能性があります。一方、気候変動はすでに、特に熱帯地域における食料生産を困難にしています。変革的な行動を取らなければ、農業生産性の伸びは大幅に鈍化し、農業と土地利用変化による純排出量だけでも2020年から2040年の間に200%増加し、農地面積はさらに5,600万ヘクタール拡大すると予測する研究もあり、対策の緊急性を示しています。

国際食糧政策研究所(IFPRI)の分析に基づくNature Food誌の論考は、しばし農業における問題が他のセクターとは異なることが正しく認識されず、この盲点により、バイオ燃料の生産促進といった逆効果の政策や、少なくとも短期的には農業生産性を低下させ、政治的抵抗を生み出す、肥料や農薬の使用量削減を農業への支払い条件とするといった曖昧な規制手段が生み出されてきたことを指摘します。具体的には、農業からの排出が、他のセクターからの排出とは3つの重要な点で異なるという事実は見落とされがちです。

  • 第一に、農業からの排出は、排出プロファイルが大きく異なる分散型生産プロセスから発生するため、炭素税などの政策の効果が低下します。燃焼による排出は、燃焼量とほぼ一定の割合で発生する燃焼による排出とは大きく異なります。
  • 第二に、農業食料セクターからの排出は、生産と土地利用の変化の両方から発生します。つまり、収量を低下させる規制措置(農家に完全有機農業への移行を義務付ける規制など)は、食料供給の減少を相殺するために土地利用を拡大するインセンティブを生み出し、土地利用の変化による排出量を増加させることになります。バイオ燃料の生産に食料作物利用を義務付けるアプローチも同様に、土地利用の変化による排出量を生み出します。対照的に、農業生産性の向上は農地面積の縮小を可能にし、土地利用の変化への圧力を軽減します。
  • 第三に、政策立案者は、生産性向上の効果を逆転させる可能性のあるリバウンド効果に注意する必要があります。これは、効率性の向上によって生産コストが低下し、それが生産量の増加を促すインセンティブとなり、結果として排出量の増加を誘発する状況を指します。しかし、食料需要の価格弾力性が低いため、農業ではこのようなリバウンド効果は他のセクターよりも深刻ではありません。

 

さらに、政策においては、農業食料セクターにおける様々な排出量の規模と時期を考慮する必要があります。農業生産からの排出量の半分以上は、主に畜産と稲作に由来するメタン(CH4)です。20年間で見ると、メタン排出による地球温暖化への影響は、総排出量の大部分を占めるCO2の80~86倍に相当し、100年間で見るとその28倍にもなります。したがって、メタン排出量の削減に向けた迅速な行動は、排出量削減のカーブを緩めるのに役立ちます。また、農業は、もう一つの強力な温室効果ガスである亜酸化窒素(N2O)の世界排出量の4分の3以上を占めています。

 

論考は、以上の農業食料セクターの特殊な特性を考慮し、温室効果ガス排出量削減のための6つの潜在的な政策経路を検討しました。

  1. 分散化され差別化された農業生産プロセスにおいては、炭素税は燃焼によって生成されるエネルギーに課税される税よりも効果が大幅に低い傾向にあります。
  2. 補助金の削減による排出量削減効果は限定的であり、結果として生じる食料価格の上昇に対する反発を招く可能性があります。
  3. 規制は往々にして高い遵守コストを伴い、収穫量の低下につながる可能性があり、農業の拡大と土地利用の変化に伴う排出量の増加を招く可能性があります。
  4. 現在の炭素クレジット制度はメリットを過大評価しており、効果的なキャップ・アンド・トレード制度に類似したものへと改革する必要があります。
  5. 気候変動に強い作物、改良された家畜の育種、改良された家畜飼料といったグリーン農業イノベーションのための研究開発への投資は、排出量を大幅に削減するとともに、農家の収入増加と食料コストの削減につながります。
  6. 需要側の戦略(食生活の転換、食品廃棄物の削減、食品製品のイノベーション)は、特に資源集約型食品からの排出量をさらに削減し、健康と環境にも利益をもたらします。

 

以上を踏まえ、論考は、イネの間断灌漑や家畜給餌技術の向上などのグリーンイノベーションが最も有望で魅力的な経路であることを示しました。農業食料システムには特有の課題と機会があるため、集中的な研究開発によるグリーンイノベーションの貢献は、他のセクターよりもさらに重要です。需要側の取り組みと組み合わせたグリーンイノベーションに重点を置いたターゲットミックスは、農業食料セクターからの排出量を大幅に削減する最も有望な道筋であり、農家の収入増加、より安定的で手頃な価格の食料供給、貧困の軽減といった相乗効果も期待できます。この戦略は、既存の農業支援枠組みを見直すことを通じて資金を調達できる可能性があります。

 

(参考文献)
Vos, R., Martin, W. Green innovations are the best policy option for reducing greenhouse gas emissions from agrifood systems. Nat Food (2026). https://doi.org/10.1038/s43016-025-01291-z

Vos, Rob; and Martin, Will. 2025. Options for reducing greenhouse gas emissions from agriculture and food systems. IFPRI Discussion Paper 2336. Washington, DC: International Food Policy Research Institute. https://hdl.handle.net/10568/174515

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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