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1413. 世界の食料システムの変革に向けたプラネタリーヘルスアプローチ

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1413. 世界の食料システムの変革に向けたプラネタリーヘルスアプローチ

 

イギリス医師会雑誌(The BMJ)に掲載された論考は、世界の食料システムの変革に向け、プラネタリーヘルスアプローチを基盤とした学際的連携の重要性を強調しました。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、世界の飢餓を撲滅し、栄養状態を改善し、持続可能な農業慣行を採用することで、世界の食料安全保障を達成することを目指しています。 しかし2024年時点で6億7,300万人以上が飢餓に苦しんでおり、その大半はアフリカとアジアに集中しています。気候変動、紛争、経済ショック、食料価格の高騰によって、この状況はさらに悪化しています。 干ばつ、洪水、熱波など、気候変動によって引き起こされる異常気象が、農作物の収穫量に壊滅的な打撃を与えています。一方、ウクライナ戦争をはじめとする紛争は、農業生産と輸出に影響を及ぼしています。 小規模農家を含む南半球の脆弱な社会層は、食料供給とアクセスの減少、食料の栄養価の低下、食料・水由来の感染症の増加、貧困と不平等の拡大に直面しています。対策を講じなければ、2050年までにさらに1億8,300万人が、食料システムへの複数のストレス要因を悪化させている気候危機により飢餓の危機に瀕すると予測されています。

食料システムと気候変動の間には双方向のつながりがあります。気候変動は食料システムに悪影響を及ぼしますが、食料システムは温室効果ガス排出の最も顕著な要因の一つで、主に、森林伐採と土地利用の変化、生物多様性の喪失、急速な畜産部門の拡大、そして淡水汚染の一因にもなっている肥料やその他の農薬の大量使用によるものです。 世界の食料システムの持続不可能性に対する懸念が高まる一方で、制度のサイロ化や食料システムを統括する部門間の連携不足・予算不足や政策の断片化が、持続不可能な食料システムを慢性化させています。これらの盲点は、生態系の劣化と生物多様性の減少、そして食料システムの危機を増幅させ、食料栄養危機、生活の不安定化、そして社会的不平等を深刻化させる傾向があります。

現在の食料システムは持続可能ではなく、あらゆる場所のすべての人々にとって、栄養、健康、環境面での成果がもたらされていないという点で、コンセンサスが得られています。私たちは、「食料システムを人々と地球のために機能させる」という新たな共通ビジョンを構想しなければなりません。その際、開発途上国における食料の約60%から80%を生産する女性、先住民コミュニティ、そして歴史的に周縁化されてきたその他のグループの役割を拡大することも重要です。未来の食料システムは、人々、文化、食の伝統、そして自然の多様性を反映し、尊重するものであり、再生型農業、持続可能な天然資源の利用、気候変動対策、そして地球の健康増進のための基盤となるべきです。そのためには、食料システム内、そして水、エネルギー、環境、健康といった相互に関連するシステム内の複雑な相互関係を認識し、トレードオフを管理し、相乗効果を生み出すシステムリーダーシップが求められます。

地域の食料生産者がより多くの食料を持続可能な方法で生産できるように支援し、先住民コミュニティが失われた食の伝統を復活させ、栄養がありながら十分に利用されてこなかった作物を食料システムに組み込むためには、大胆な行動が必要です。また、脆弱なグループの包摂と公平性を促進するための新たな政策と戦略を策定するには、野心的な思考が必要です。論考は、気候変動、食料システム、栄養、そして健康の複雑な連鎖に対処するには、大胆かつ野心的な思考に加え、環境の持続可能性、公衆衛生、そして社会的公平性を統合するプラネタリーヘルスを基盤とした学際的な連携の必要性を訴えました。

 

(参考文献)
Tafadzwanashe Mabhaudhi, From crisis to action: a new shared vision for the future food system. 
BMJ 2026; 392 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.r2531


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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