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1412. サブサハラアフリカは、産業革命以前の生物多様性の約4分の1を喪失した可能性がある
1412. サブサハラアフリカは、産業革命以前の生物多様性の約4分の1を喪失した可能性がある
生物多様性は、人間の健康、文化、価値観、そして経済の重要な側面を支えています。しかし、農地の拡大、都市化、資源採取といった人間の活動によって、生物多様性は急速に失われつつあり、現在および将来の世代の福祉を脅かしています。生物多様性の喪失を抑制する上で大きな障壁となっているのは、政策や計画策定に不可欠な信頼できる生物多様性情報の不足です。この問題は特に差し迫った社会経済的課題に直面するサブサハラアフリカで深刻で、公正で持続可能な未来を築くための重要な資産である豊かな生物多様性が、驚くべき速さで失われています。
サブサハラアフリカの生物多様性推計において、トップダウンの方法は地域の実情を反映しないと批判の対象になってきました。サブサハラアフリカでは、政策に関連する生物多様性データが不足している一方、研究者、フィールドレンジャー、ツアーガイド、博物館学芸員などは、この地域の生物多様性およびその変容について知識を有しています。論文のもととなった研究はこれら専門家約200名を情報収集プロセスに巻き込みました。その結果得られたデータセットには、多様な動植物種の個体数が人間の活動によってどのように影響を受けてきたかに関する推定値が含まれています。論文は、サブサハラアフリカ全体の生態系における各種の個体数を、産業革命以前(約1700年以前)の個体数に対する割合で表した指数を用いて生物多様性の変化を示す地図を作成しました。
分析の結果、サブサハラアフリカでは、産業革命以前の個体群と比較して、動植物の生物多様性が24%減少していることが分かりました。種の多様性の喪失は、撹乱に適応した一部のイネ科植物や野生の花の種では個体群のわずか10%ですが、ゾウ、ライオン、一部のレイヨウなどの大型哺乳類では75%以上減少しています。ルワンダとナイジェリアは最大の減少を経験した一方、最も影響を受けなかった個体群はナミビアとボツワナで観察されました。
サブサハラアフリカにおける生物多様性損失の主な要因は、過剰な資源搾取、過放牧、そして農業活動です。特筆すべき発見は、この地域に残存する野生個体群の84%が保護地域外、つまり野生または家畜化された草食動物が草を食む自然林や草地生態系(放牧地として知られる)に生息しているということです。これらの地域では、人々は生物多様性と共存し、生物多様性に依存しています。生物多様性の保全と回復における優先事項は、サブサハラアフリカの5億人以上の人々を支えているこれらの「農地」の持続可能な管理です。
今世紀、サブサハラアフリカは、世界のどの地域よりも大規模な人口動態および環境変化を経験すると予想されています。2050年までに耕作地面積は倍増し、穀物需要は3倍に増加すると予測されています。この地域の自然林と広大な放牧地は、将来の生物多様性保全・回復戦略の中核となるべきです。こうした戦略が生態学的に効果的で社会的に正当であるには、生物多様性と人々を支えるガバナンス体制、価値体系、土地利用慣行を理解し、支援することが不可欠です。
論文は、採用されたアプローチには限界があり、潜在的なバイアスやエラーをすべて排除することはできなかったことも認めつつ、専門家のボトムアップ知識が、生物多様性の喪失を軽減するための代替開発シナリオや戦略の成果を評価するために活用される可能性に期待を寄せました。
(参考文献)
Clements, H.S., Biggs, R., De Vos, A. et al. A place-based assessment of biodiversity intactness in sub-Saharan Africa. Nature 649, 113–121 (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09781-7
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)