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956. 産業革命以前比で1.5℃越えを記録

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956. 産業革命以前比で1.5℃越えを記録

 

2024年2月8日、EUのコペルニクス気候変動サービスは、2024年1月は世界的に過去最も高い気温を記録した1月となり、1991-2020年平均値よりも0.70℃高く、これまで最も高温2020年1月の記録を0.12℃上回りました。これにより、産業革命以前1850-1900年の月別平均気温と比較して1.66℃高く、8カ月連続で過去最も暑い月別記録を更新したことになります。さらに、2023年2月~2024年1月の12か月間は、1991-2020年平均よりも0.64℃高く、産業革命以前の1850-1900年平均値と比べ1.52℃高い値を記録しました。

 

既に2023年の世界平均気温が1850年以来の観測史上最も高く、産業革命以前と比べて1.48℃高水準であると報告されていました。パリ協定の1.5℃目標を一時的にでも超えてしまうことは、数年前から指摘されていたことですが、 今回とうとう超えてしまったことになります。  

なぜ産業革命期と比べて1.5℃温暖化が問題なのかという点をおさらいしておきますと、多くの気候モデルが、1.5℃温暖化と2℃温暖化のケースで、地表・海洋の殆どの地域において、気温・降雨等の気候状況が相当程度異なることを示しているそうです。2100年までに、温暖化が2℃の場合と1.5℃の場合を比べ、後者では世界平均海面上昇が0.1m低いと予測されており、海面上昇の速度を遅らせることで島嶼諸国や低地海岸・デルタ地域に住む人類・生態系の適応策策定の時間稼ぎが可能となります。同様に、2℃にくらべ1.5℃の温暖化のもとでは、生物多様性喪失・絶滅の危機、海洋温度上昇・酸性化の程度、が緩和されます。健康・生活・食料安全保障・水供給・人間の安全保障・経済成長への気候関連リスクは1.5℃でも上昇しますが、2℃ではさらに高まります。2℃に比べ1.5℃での温暖化に対する適応策は安くすみます。

今回、1.5℃を超えてしまいましたが、今後、大きく超えないためには、エネルギー・土地利用・都市・インフラ・産業における急激で広範なシステム移行が必要となります。食料システムにおいても、世界人口に対する食料安全保障を維持しつつ、温室効果ガス排出および環境負荷削減のためのイノベーションと行動変容を伴う変革が求められています。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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